▼MENU

Divine Gate -ディバインゲート- 攻略データベース

【MENU】

 

△閉じる

<ストーリー解説トップ

ストーリーまとめ【聖戦】

「これは、ふたりの王様とふたりの女王様のお話。」

「聖戦」に関するストーリーをまとめました。なお、このページでは、扉の君封印後に起こった聖戦についてのみ記載しています。

扉の君が封印され、黄昏の審判が終わった裏で、ヒカリとユカリはそれぞれ天界と魔界の女王へ即位します。 親愛なる幼馴染ヴァルプルギスを闇神ヘグニに殺されたユカリは、かつて神へと加担した天界に聖戦を申し込みます。

かつて争った精王と魔王、過去に囚われた参謀たち、さらに常界では怪しい動きが……? 聖戦の末、天界と魔界が歩みだした新しい道とは。

聖戦:序章

これは、ふたりの王様と、ふたりの女王様のお話。違う世界に生まれ落ちたせいで、同じ未来を歩むことが出来なかった話。だけど、どうか最後まで目を逸らさずに見届けて欲しい。だって、これは再び同じ未来を歩むようになったお話なんだから。

志したのは、「変革なき平穏」と「犠牲の先の革命」。それのどちらが間違っていたのかはわからない。だけど、ひとつだけわかったことがあるの。それは、そのどちらも正しくはなかった、ということ。だから私達は、新しい道へと歩き出せたのよ。

彼らは初めから、私達のことなんて見ていなかったのかもしれない。だって、側にいることしか出来なかったから。きっと彼らは最初からわかっていたんじゃないかな。この争いの先にある未来を。きっと、彼らはそんな未来だけを見ていたんだと思う。

私達は、彼らのことをなにもわかっていなかった。それは昔も、今も。私達は、ただ側に居るだけしか出来なかった。だから、最後まで側に居続けた。これからも、許されるなら彼らの側に居たい。彼らの選んだ未来を、私達はただ見てみたいのよ。

彼女達は、最後まで女王だった。きっと、泣きたいときもあったと思う。笑えないときもあったと思う。立ち止まりたいときもあったと思う。だけど、彼女達は最後まで女王だった。だって、最後まで自分達の信じる世界を守りぬいてみせたんだから。

結局、あいつらは昔となにも変わらなかった。互いに抱いた理想をぶつけ合う。そこに言葉はいらない。ただ、あいつらは王様だったんだ。自分たちの世界を守る王様。最後まで、あいつらは王の責務を全うしただけなんだよ。愛する世界を守る為に。

こうして、堕精王率いる魔界軍と、堕魔王率いる天界軍の聖戦は幕を閉じた。ふたりの王と、ふたりの女王。変革なき平穏と、犠牲の先の革命。戦う力と、守る力。そして、生まれた新しい道。いま一度、かつての聖戦から続く長い昔話を始めようか。

オベロンとヴラドによる
「かつての聖戦」についてはこちら

▲上へ戻る

登場人物

幸せを追い求める妖精王

光妖精王ヒカリ

黄昏の審判は終わり、天界と神の繋がりは途絶えた。綴られし妖精王は消え、辿り着いた歪な平和の真実。美宮殿で難しい書類に目を通すのは妖精王の座を継いだ光妖精王ヒカリ。その直ぐ傍、世界評議会を抜け、幸せな世界を求める天才の姿が。新たな女王は告げる。今度こそ、私がみんなを幸せな世界へ連れて行くよ。

黄昏の審判:光の軌跡

黄昏の審判が終わり、取り戻した平穏。妖精議会の席に立つ光妖精王には様々な視線が向けられた。幼さの残る容姿、強すぎた例外の血筋、指名手配犯との交友関係、そして側近の一人の魔物。それでも少女は、幸せな世界の為、日夜奮闘するのだった。

ヒカリ:ハロウィン

常界の仕来りに習い、天界ではハロウィンパーティーが行われていた。お忍びで参加する光妖精王ヒカリの目的はもちろん期間限定クレープ。妖精と人間の間に生まれた子が天界を治めることへの反発に耐える彼女に訪れたほんの一時の安らぎ。だが、彼女の父の存在に気づいてしまった妖精達は、ただ恐怖に怯えていた。

▲上へ戻る

あの子の世界を追い求める魔女王

黄昏の審判:序章

今日もあの子が泣いていた。昨日もあの子は泣いていた。明日はあの子に笑ってもらいたい。どうして、あの子はいつも一人なの。堕ちたからとか、人間だからとか、そんなの私は知らない。だって私は、泣き虫なあの子のことが、だいすきなんだから。

黄昏の審判:闇の軌跡

今日もあの子が来てくれた。昨日もあの子は来てくれた。明日もあの子は来てくれるかな。目の前で散った魔女王。思い出される記憶。少女は魔界で生まれ、常界に堕とされた。そして決める覚悟の刻。だって私は、あの子のことが、大好きなんだから。

闇魔女王ユカリ

終焉を迎えた黄昏の審判、平穏を取り戻した統合世界。だが、それは束の間の平穏だった。新たに即位した魔界の女王は大好きな幼馴染を抱きしめていた。あなたと私は、二人で一人。闇魔女王ユカリが口にした宣戦布告。神へと加担した歪な平和を壊す為に始まるのは、魔界と天界の聖戦。そうよ、戦争を始めましょう。

黄昏の審判:闇の軌跡

平穏に包まれた常界で開かれた新生世界評議会の会議の場に送り込まれた魔界代表はそっと一通の手紙を読み上げた。それは天界に対する宣戦布告。黄昏の審判を引き起こした神々と通じた罪人達への報復。全ては、大好きだった、あの子の世界の為に。

▲上へ戻る

解放された堕魔王ヴラド、ヒカリの元へ

ヴラド

寝惚け眼を擦りながら起き上がったヴラド。おはよう、随分と眠ってたわね。覗き込む水色の前髪。冗談は止めてくれ。ついた悪態。こんなこと、冗談でしないよ。そして交わされた密約。オレ達はあの時、世界から弾かれた。でも、やり残したことがあるでしょう。そう、彼はただ、果たせなかった決着をつけたかった。

かつての聖戦

彼は、ただ綴られた存在だった。戦う為だけに、産まれた。そんな彼が、神になろうとした。湖妖精は、光妖精王に真実を伝える。でも、彼は私達を裏切った。そんな彼を止めるには、彼しかいないの。美宮殿の王の間、そこには堕魔王が君臨していた。

堕魔王ヴラド

かつて、強大な力を誇る二人の王が存在していた。天界を統治する精王と、魔界を統治する魔王。二人は共に禁忌を犯し、世界から弾かれていた。そして時は過ぎ、二人の王は再び対峙する。だが、あの時と形を変えて。天界を率いるのは、堕魔王ヴラド。そして、魔界の王の席についていたのは、目覚めた堕精王だった。

明日の天気Ⅳ

眩術師は、湖妖精の考えが信じられなかった。奴の力に頼るということは、一歩間違えれば天界は跡形もなく消えるということだぞ。それでもね、そうする以外に方法はないの。何をそんなに焦っている。そう、珍しく湖妖精に焦りがみえたのだった。

解放された堕精王オベロン、ユカリの元へ

オベロン

ふぁあ、よく寝た。解放されてしまったオベロン。彼は綴られた存在でありながら、神になるという禁忌を犯した妖精であり、そして世界を敵に回した。おはよう、元気だったかい。目覚めた彼の前、一人の仮面の男は現れた。今ね、世界がとても、大変なんだよ。そして返す答え。世界なんざ、生まれた時から俺の敵だ。

かつての聖戦

彼は、魔界の為に竜へ近づいたわけじゃない。現闇魔女王へ告げる魔界の歴史。だから私達は彼を追放した。でなければ、私達の世界は壊されていた。だからこそ、私達に今必要なのは、彼じゃなく、彼なのよ。そう、彼女の後ろには、堕精王がいた。

元凶はあなたなのね。闇魔女王はその事実を知りながらも、堕精王を受け入れた。俺のこと、いつでも殺していいよ。ええ、この戦いが終わったら、そのつもりよ。互いに利用し合う二人。女王は友の復讐の為、王は自分を裏切った世界への復讐の為。

幾元嬢コスモ

ご機嫌いかがかしら。再会を果たした幾元嬢コスモ。よく、ここまで辿り着けたわね、妖精のあなたが。そう、ここは不夜城。とっておきの、ゲームを始めるのでしょう。彼女にとって、戦争はゲームでしかない。私は賭けたの、あなたが生きる未来に。そして、黒いウサギだけが生き残り、白いウサギが死ぬ未来に。

▲上へ戻る

天界勢力

精霊議会直属天候術部隊【ウェザードリーズ】

サニィ

天候術を学んでいた彼女が手に入れたのは精杖型ドライバ【サニィ】だった。精霊議会直結の精霊士官学校では入学と共に名は消え、そして卒業と共に新しい名前が与えられる。それは妖精としてではなく、一人の兵という役割で生きることを意味していた。そう、平和であった天界にも、このような組織は存在していた。

シャイニィ

新たな組織を準備しているの。士官学校で教官を務めていたシャイニィにそんな話が持ちかけられた。いつか時代が巡った時、あの子の力になって欲しい。手渡された精霊議会直属天候術部隊【ウェザードリーズ】のロングベスト。受け取って、もらえるかしら。美人の頼みじゃ仕方ねぇ。それはまだ、美精王の時代の話。

ウェザードリーズの先輩の引きこもり

イッテツ

起きてもらえるかな。起きてます。寝てるよね。寝てません。もう、立ちなさい。立ってます。終わりのない押し問答。横たわったままのイッテツ。その隣で呆れ返る精参謀長。こうなったら、奥の手を使うしかないわね。そして部屋に咲き誇る蓮の花。漂う目覚めの香り。わかったってば。そして二人の会話は始まった。

炎杖刀イッテツ

で、ワシになんの用だ。受け答えを始めたイッテツ。あなたの後輩たちも、持ち場に着きはじめたわ。その一言は、彼の意識を引くのに不十分だった。じゃあ、みんなに任せよう。呆れた精参謀長は部屋を後にした。そして、来客の去った部屋で、彼は一人立ち上がる。が、すぐに座った。やっぱり、みんなに任せよう。

五人の美女

美女のお清め

美宮殿に呼び出された炎の美女。あなたには、きっと彼女の相手をしてもらう。それは魔界の黒い森の赤い女王。私、彼女を知っているわ。そして続く言葉。へぇー、俺もそいつ、良く知ってるぜ。なぜか炎の美女の隣、そこには炎刑者がいたのだった。

花はいつか、散ってしまうものなの。水も滴る絶世の美女は思い出を眺めていた。どうせ散るなら、綺麗にね。その言葉から感じとった不穏な覚悟。これは私からの命令です。絶対に、もう、誰も死んだら駄目です。それじゃあ、何の意味もないから。

風の美女はひとりだった。あの頃は、いつも四人だったのに。同じ世界で生まれたにも関わらず、離れ離れになってしまった彼女の耳に聖戦の話は遠かった。だったら目を覚まさせるのが、あなたの役目じゃないかな。湖妖精はそう優しく声をかけた。

▲上へ戻る

魔界勢力

六色の女王

六色の女王の覚悟

そう、彼女は待っていた。共に立ち向かう人間を。私は、何があっても戦い抜く。そして、日常に帰ってくるんだ。闇魔女王が返したのは厳しい視線。あなたは、友達と戦えるの。覚悟は、出来ている。赤の女王は動き出す。黒の森の軍勢を引き連れて。

空いたティーカップ、注がれることのない紅茶、ざわめく不思議の国の軍勢。溶けたのは角砂糖、残ったのは王位。私はね、早く甘い甘い紅茶を嗜みながら、クッキーをほお張りたいのよ。そんな我侭な敵意は、水も滴るいい女へと向けられたのだった。

それでも彼女は眠かった。深い、深い、眠りから目覚めた女王が歩まんとするのは、深い、深い、茨の道。この争いが終れば、今度こそいっぱい眠れるのね。そう言いながら、眠れる森の軍勢に守られた彼女は、浅い、浅い、眠りに落ちていくのだった。

0から始まった彼女の物語。主役は当然私よね。だが、どうやら彼女は主役ではないらしい。私を差し置いて、あなたが主役だなんて認めないわ。睨みつけた先は闇魔女王。そんな彼女へ返す言葉。いつの時代もね、最後まで生き残った一人が、主役よ。

争いから、何が生まれるのだろうか。紫の女王は避けられない日々を前に、遠き月へと歌を詠む。揺れる世界に昇る月が照らすのは、天か魔か。ようやく思い出したんですね。それは竹林に迷い込んだいつかの二人。幼き日の前魔女王と現魔女王だった。

どういうことかしら、私が怖くて逃げ出したのかしら。攻め込む先の無い白の女王。あなたは私と一緒に来て。そんな彼女に声をかけたのは幻奏者。まったく、趣味が悪いですわよ。それは幻奏者の後ろに立った一人の男に対して向けられた言葉だった。

六魔将

魔将の刃

決戦の日へ向けて鍛練を怠らない炎魔将の元を訪ねたのは赤の女王。共に幼き日を過ごし、そして大人として過ごすこれから。もう、あの日みたいに笑い合うわけにはいかないんだよね。そう言った炎魔将は刃を鞘に収めた。私達の日常を、取り返そう。

さっさと終らせましょう。水魔将は闇魔女王の横に。だったら、あなた達に一つお願いをしてもいいかしら。そして告げられたのは、幻奏者の奏でる幻想。誰でも、一人は寂しいのよ。ぎゅっと握り締めるストール。妹を愛する水魔将は全てを理解した。

どっちが風に相応しいか、決着をつける時が来たか。風魔将は胸を躍らせていた。だが、そんな彼を撫でる風。何故そんな悲しむんだ。読み取ったのは不吉な予感。主役ってのは、絶対に死なない。だがそれは、彼が主役だったらの話でしかなかった。

もしも戦場で、彼が敵として目の前に現れたら、僕は彼を殺すことが出来るのだろうか。終らない自問自答。何をそんな浮かない顔してるんだい。隣にはもう一人の幼馴染。もしも僕がためらったその時は、迷わず打ち抜いて下さい。彼じゃなく、僕を。

さっさと終らせましょう。闇魔将は闇魔女王の横に。だったら、あなた達に一つお願いをしてもいいかしら。そして告げられたのは、幻奏者の奏でる幻想。誰でも、一人は寂しいのよ。ぎゅっと握り締めるストール。姉を愛する闇魔将は全てを理解した。

アイツは今、どこで何をしているんだろうな。ふと思い出すのは、何度転んでも立ち上がるかつての愛弟子の姿。いつか一緒に祝い酒を浴びれると思ってたのによ。だがそんな無魔将は嬉しそうだった。もし出会っちまっても、俺は手を抜く気はないぜ。

▲上へ戻る

新生世界評議会での火花

ロビン

何故、ロビンが天界代表として世界評議会に送り込まれたのか、それは世界評議員だけでなく、天界の妖精達も皆、頭を悩ませてしまうほどの事件だった。会議日時を間違えるだけでなく、会議場所の勘違いは毎度のこと、そして結果数時間の遅刻は当たり前だった。魔界と一触即発の最中、何故、彼女が選ばれたのか。

世界評議員ロビン

評議員にロビンを選んだのは紛れも無く光妖精王だった。彼女なりに考えがあってか、それとも何も考えずにか。ただ結果、魔界が武力行使に出ることはまだなかった。また、彼女は次の会議での報告事項が憂鬱だった。それは幽閉していた堕精王失踪の件。この事実を知る者は、天界でも僅か一部の妖精達だけだった。

ディアブロ

魔界を代表して新生世界評議会の会議の場に現われたディアブロは口を閉ざしたままだった。魔界から天界への戦線布告に対し、未だ満足のいく回答を得ることが出来ない魔界。圧倒的に有利な戦力を揃えつつも、武力行使しない理由は不明だった。そして、そんな彼の元、水の悪魔と共に、神となった水の悪魔は訪れる。

世界評議員ディアブロ

現世界評議員のディアブロにとって、元世界評議会所属の研究者である水才は見逃せない存在だった。口を閉ざした水才の代わりに言葉を発する水波神。離れていった聖暦の天才達の末路。もう世界評議会はお終いさ。行方不明の炎才と闇才、教団所属の水才と風才、天界についた光才、残された天才は無才だけだった。

▲上へ戻る

武力行使は棺とともに

光精王の予感

彼女と戦う覚悟は、出来ているんだよね。光精王の問いかけに、口を閉ざした光妖精王。お嬢ちゃんは、黙って見ててもいいんだぜ。堕魔王の優しさ。でも、これは私の責務だから。だが、そんな三人に隠れて、すでに動き始めた妖精が存在していた。

闇精王の予感

堕ちること、堕とされること、それは似て非なるもの。私はあなたと同じなの。だからこそ、寄り添う二人。私は世界を敵にした。闇魔女王は優しく答える。ずっと一緒よ、世界を壊すまでは。だが、彼女は知らない。すでに戦争が始まっていたことを。

神叛竜ジュリエット

綴られし竜は運命に背いた。だが、それは同時に禁忌を犯すということ。これで君は、死ねなくなったよ。だが、神叛竜ジュリエットは知らなかった。運命に背いた結果、更なる運命に翻弄されることを。向った先は魔界、そこに彼はいなかった。見るな。彼の代わりに見つかったのは、永遠の眠りについた魔物だった。

運命に背いた竜

ごめんなさい。その言葉で悲劇は始まりを迎えた。そして、彼女が出会ったのは新しい終わり。不夜城に届けられた差出人不明の棺、覗き込むのは五色の女王。施された死化粧、無数の蓮の花に包まれ、永遠の眠りについていたのは、白の女王だった。

神叛獣ロメオ

綴られし獣は運命に背いた。だが、それは同時に禁忌を犯すということ。これで君は、死ねなくなったよ。だが、神叛獣ロメオは知らなかった。運命に背いた結果、更なる運命に翻弄されることを。向った先は天界、そこに彼女はいなかった。見られちゃったね。彼女の代わりに見つかったのは、血に濡れた妖精だった。

運命に背いた獣

ありがとう。その言葉で悲劇は終わりを迎えた。そして、彼が出会ったのは新しい始まり。血に濡れた妖精は語る。これが私に出来ること。あの子は彼を想う。彼は彼女を求める。だから彼女はここにいない。それなら、私が代わりを果たすまでだから。

魔参謀長ファティマ

魔界に送り届けられた棺。これは、警告と受け取るべきなのかしら。それとも、挑発と受け取るべきなのかしら。その意味を知るのは、その棺の差出人のみだった。それなら私は、好きに解釈させてもらうわ。そして、その行為を解釈したのは魔参謀長ファティマだけではなかった。僕の解釈だと、警発かな。挑告かな。

精参謀長ヴィヴィアン

随分と顔に似合わない悪趣味なことしてくれるじゃん。堕魔王は精参謀長ヴィヴィアンを問い詰めていた。のんびりしていたら、あっという間に時間は過ぎちゃうから。その言葉の裏には、彼女と彼だけが知る密約があった。忘れたら駄目だよ、あなたのそのかりそめの命には、限られた時間しか与えられていないことを。

▲上へ戻る

天界の美女の元へと攻めこむ六色の女王

紅炎魔将アカズキン

天界に響き渡る警戒音、発せられた避難勧告。だが、その勧告が届き渡ることなく、辺境の街は終わりを告げた。燃え上がる炎が消えたとき、そこに伸びた影は赤い頭巾。戦場に現れたのは、民を引き連れた女王ではなく、兵を引き連れた将だった。私は私の日常を取り戻す。そう、そこには紅炎魔将アカズキンがいた。

美炎精将ヘレネ

私があなたを止める。紅炎魔将の前に立ち塞がった美炎精将ヘレネ。そして、彼女が説くのは解消された歪な平和と、いまの天界の在り方。だが、そんな言葉は届きはしない。私たちの女王の考えは、理解出来ないでしょうね。じゃあ、なんのために。動き出した聖戦、その裏にはいくつもの思惑が存在していたのだった。

蒼水魔将アリス

進軍、開始。不思議の国の全勢力が従うのは、王という地位を捨て、戦場へと降り立った蒼水魔将アリスだった。それでも彼らが彼女に付き従うのは、地位ではなく、彼女そのものへの信頼。さぁ、パレードを始めましょう。響き渡る歓喜は悲鳴、兵隊が閉ざす退路。閉じ込められた多くの妖精。楽しんでもらえるかな。

美水精将オノノコマチ

蒼水魔将の前へと立ち塞がった美水精将オノノコマチは問う。なぜ、誰も殺さない。天界の辺境の街は氷で閉ざされた。だが、そこに住まう妖精は誰一人、命を落としてはいなかった。それは紅炎魔将が焼き払った街も同様に。そして、その問いへの返答。善悪を生死に重ねる、キミたちがそんな浅はかな考えだからだよ。

翠風魔将イバラ

自分が王から将へと成り代わった事実に、翠風魔将イバラは気づいているのだろうか。寝惚け眼をこすりながら見つめたのは天界の辺境の街。そして、彼女は一言も言葉を発することなく、その街は茨に覆われた。これは、ただの時間稼ぎにしか過ぎないんだから。そして、彼女は再び深い眠りにつこうとしたのだった。

美風精将ヨウキヒ

眠られてちゃ、困るのよ。無数の茨を掻き分けながら、美風精将ヨウキヒは姿を現した。ウチらだって、無益な争いをしたいわけじゃない。だが、すれ違い続ける両陣営。勝利の先に、なにを求めるの。その問いへの答え。勝利、敗北、それを語るのなら、私達は敗北で構わない。無益な戦いが、ここでも始まるのだった。

黄光魔将シンデレラ

鳴り響く24時の終わりの鐘。これは0時の始まりの鐘よ。定刻通り、黄光魔将は天界への進軍を開始した。そして、そんな彼女の前に立ち塞がる美光精将。ここで私が、食い止めます。それじゃあ、華麗に舞ってみなさいよ。舞踏会の幕はあがる。そうよ、踊り続けなさい。永遠に、永久に、私たちの手のひらの上で。

美光精将カタリナ

美光精将カタリナは違和感を感じずにはいられなかった。あなた達の本当の狙いは、なんなのでしょうか。燃え上がる街並み、削られる大地。だが、絶えることのない命。あんたも知ってるでしょ。あの男が聖なる扉を手にしたことを。それでしたら、この争いは。そして、そんな二人の間に、招かれざる神が舞い降りた。

菫闇魔将カグヤ

先に仕掛けてきたのは、あなた達の方よ。美闇精将を前に、唇をかみ締めていた菫闇魔将カグヤ。彼女が連れてきたのは、蓮の花に包まれ、深い眠りに堕ちた友の想い。待ってよ、わかるように説明して。いまさら、なにを言っているの。すれ違う想いと、行き違う解釈。あなた達はいつだって、知らないフリをするのね。

美闇精将クレオパトラ

その戦いは、夜に始まり、夜に終わる。だが、決して倒れることのない美闇精将クレオパトラ。そして、互いの想いを乗せた最後の一撃。そんな二人を天高くから見下ろす男達。そんなに真剣な顔して、なにを見ているんだい。少しだけ、古い友人の雄姿をと思いまして。それを見届けたら、そろそろボク達も始めようか。

▲上へ戻る

本戦へ向けた動き

ファティマからヴラドへの密書

デオン

差し出した一通の封書。坊ちゃんは誰の差し金だ。その問いに答えることもせず、男は姿を消した。文通なんざ、趣味じゃねぇっての。その封書を開くことなく破り捨てた男。そして、そんな姿を見届けたデオンは再び夕闇へと溶ける。やっぱりあなたって人は、そういう人なんですね。その言葉は喜びにも似ていた。

密者デオン

無事に届けてくれたのね。魔参謀長から受け取った報酬。これは仕事だから。そんな言葉を残し、不夜城を後にした密者デオン。その足で向った屋敷。で、奴の様子はどうだった。伝えた一部始終。それでこそ、王の秘密機関だ。サングラス越しの瞳、葉巻を咥えた口元、そんな彼もまた、満足気な笑みを浮かべていた。

学園長リイナ

執行対象者に、情けをかけんな。それが学園長リイナの教えだった。誰だって、死にたくて生まれたわけじゃねぇ。だが、そんな彼には、唯一理解出来ない男がいた。俺のこと、殺したければ殺せ。どうせ、死ぬ為に生まれたんだ。その極端な考えに、彼はなにを思ったのか、こう返した。死に損ないは、生きて罪を償え。

▲上へ戻る

世界評議会、事実上の解散

彗青眼魔ディアブロ

お勤めご苦労さま。代表の席を外れた彗青眼魔ディアブロにかけられた言葉。話し合いなど、やはり机上の空論に過ぎない。俺も戦場へ行かせてもらう。だったら、あなたは彼について行ってもらえるかしら。そこには、王の椅子から立ち上がった堕精王がいた。そして、その言葉には二通りの意味が込められていた。

巧咲精ロビン

ごめんなさい、私が上手く出来なかったせいで。天界へ戻ったロビンはうつむいていた。ううん、あなたのせいじゃないよ。笑顔で迎える光妖精王。あぁ、嬢ちゃんはよくやった。ニヤリと笑みを浮かべる堕魔王。だから、これからもオレ達に協力してくれ。そして、そんな優しさに応える為、巧咲精は武器を手にした。

カノッサ

カノッサは語る。あなたはもちろん、覚えているでしょう。かつての聖戦が、どのような結末を迎えたのか。戦う力を求め、神の血に近づいた男。守る力を求め、竜の血に近づいた男。そして、そんな二人は、聖戦が終わったとき、自分達が愛した世界に居場所はなかった。今回の犠牲者は、いったい誰になるのかしら。

悠久神カノッサ

もし魔界が勝利していたら、私達は危なかったかもしれない。それは魔界の王が、聖戦の先で成し遂げようとしていた理想。今回も、魔界が勝利したら危ないんじゃないのかしら。いいや、今回は指導者が違うよ。彼が成し遂げたいのは、世界への復讐だ。仮面越しに微笑む男。悠久神カノッサは、その笑顔が嫌いだった。

水凛徒シャルラ

私達を集めていったいどうするつもりかしら。誰もいなくなった会議室に、続々と集まる者達。水凛徒シャルラと特別監視役、特別調停役。そして、悪戯神に寄り添うように立つ愚者。今日は君達に、改めて紹介したい人がいるんだ。ほら、入って来てよ。その声にあわせて姿を現したのは、誰かによく似た無聖人だった。

世界評議会の裏で

ギンジ生誕祭会場

こうやって、俺たちは歳をとっていくんだな。少年は離れ離れの仲間へ想いを馳せていた。一緒に過ごした時間は決して長くはない。だが、そこには確かな絆があった。そして、そんな少年の元に現れた神の威を狩る狐。それじゃ、そろそろ始めようか。

神虚狐ヤシロ

聖戦はいわば、過去の再来。そして、それは過去ではなく未来。そんな絵を描くのであれば、それを塗りつぶすまでです。神虚狐ヤシロは動き始める。そして、この世界が求めているのは神ではない。彼らの好きにさせてはいけない。友の為にと、ひたすら我慢を続けた無英斧士の元に、心強い協力者達が集い始めていた。

風系男子の果たし状

風通神ジンソク

ジンソクが始めた個人配達屋。だが、聞こえない客足。やっぱ気軽に起業するもんじゃないな。陽も沈み、暖簾を外しに表へ出ると、そこには人影が。開店祝いに来たぜ、ベイベ。受け取った小包。はい、まいど。そして走る。ってことで、ハンコよろ。そこは不夜城。果たし状だなんて、まったく今日は風が笑ってるぜ。

ビヨンド、天界のカルネアデスと出会う

ビヨンド

うーん、失敗しちゃったかな。ビヨンドから発せられる狂気。水聖人は世界の行く末を気にすることもなく、ただ自分の好奇心と向かい合っていた。どうして、彼は完成したんだろう。思い出すのは、神界へと赴いた天神の獣。とりあえず、適当に処理しといてよ。こうして、ビヨンドは失敗作として廃棄されたのだった。

超越獣ビヨンド

で、そっからがオレのスゲェところよ。超越獣ビヨンドは、飴を咥えた子供へ自慢話を続ける。そう、オレは狂気を押さえ込んだんだ。後天的なセカンドの完成形。お兄ちゃんは、それで幸せなの。それはだな、えっと。素朴な疑問に、回答を持ち合わせていない彼。だったら、いまから幸せになればいいだけだぴょん。

▲上へ戻る

本戦、開幕

ここからが本番

聖戦:本戦開幕・魔界

さぁ、ここからが本番よ。盛大に争いましょう。ファティマが振りかざした杖、天界へと攻め込む魔界の軍勢。そうよ、私達の王が進むべき、王の道を切り開くのよ。そんなファティマの心は、いまも在りし日の王の姿に縛られていたのだった。

切り開かれる道を、ただ真っ直ぐ歩き続けるユカリ。彼女が見つめる美宮殿。すべてはあの日から始まっていたのね。いまも続く因果の犠牲。だから、私は繰り返す。そして、すべての因果を断ち切るの。すべては、亡き友の為に、歩き続けるのだった。

魔界の軍勢を率いる王、オベロンの周囲には無数の魔物が配置されていた。それは警護なのか。それとも、監視なのか。それはオベロンにとって、どちらでも良かった。ただ、オベロンは自分が愛していた世界への復讐を果たしたいだけなのだから。

聖戦:本戦開幕・天界

みんな覚悟は出来てるよね。天界の王の間に集いし軍勢。それじゃ行ってくるね。王の間を後にするヴィヴィアン。待って。思わず呼び止めたヒカリ。そんなに、悲しい瞳をしないで。ヴィヴィアンの心もまた、在りし日の王に縛られていたのだった。

天界の軍勢を見送ったヒカリとヴラドは、王の間にふたり取り残されていた。まったく、嫌われたもんだな。天界の王であるヴラドの自嘲。誰も王の警護をしないのか。それは、私も同じだよ。ヒカリの体を流れる血が、ヒカリを孤独にさせたのだった。

まさか、姉妹がいたなんてな。あの日、確かにひとりの子供が生まれた。そして存在しないはずの姉と妹が存在していた。ま、事情は理解した。天界は、今も昔も歪な平和で保たれていたんだ。だが、嬢ちゃん、どうかその血を否定しないでやってくれ。

▲上へ戻る

聖戦:炎の戦

炎と炎は混ざり合い、空を茜色に染める。そうよ、あの日の出会いはこんな茜色の夕暮れだった。それはまだかつての聖戦が始まる前の出来事。ヘレネが語りかけるあの日の出会い。だから、それがどうしたっていうの。アカズキンの炎はより燃え盛る。

あのときだって、私達の日常を奪ったのはあなた達じゃない。かつての聖戦で侵略された魔界。そして、アカズキンの日常は奪われた。あのとき、私はすべてを失った。私の日常も、あなたと出会ったあの街も。だから私は、永遠の日常を取り戻すだけ。

あれはなにかの間違いなの。ぶつかる炎。今回だって、きっとなにかの間違いなの。だが、盟友であるシラユキを失ったアカズキンの耳には届かない。言葉でわかりあえないのなら、こうする以外に他はないってことね。ヘレネは更なる炎を燃やした。

これでもう、最後にしましょう。永遠の日常を求めたアカズキンと、ただもう一度やり直したいヘレネ。そんなふたりの間に割って入った二等悪魔。だったら、あんたらが争う必要はないだろ。その日常に、真っ赤に燃える友達がいたら楽しそうじゃん。

オマエの日常に、コイツを置いてやれよ。そして、もう一度出会い直せばいい。燃え尽きたふたりの炎。だけどね、私とあなたは、こうして戦場で出会ってしまったの。燃え尽きたふたりの後ろ、そこには刃と杖を構えたヒメヅルとサニィが立っていた。

どうも、こんにちは、はじめまして。サニィは挨拶代わりに杖を天へと掲げる。そして、茜色の空を割るように晴れ渡る戦場。降り注ぐ日差し。こちらこそ、はじめまして。ヒメヅルは挨拶代わりに、降り注ぐ日差しの刃を無数に斬ってみせたのだった。

燃え尽きた炎のあと、再び燃え上がる炎。始まったヒメヅルとサニィの戦い。どうしてかな、初めてな気がしないよ。それはヒメヅルの刃の一撃を受けての言葉。不思議だね、私も初めてな気がしないよ。同時にヒメヅルもサニィの一撃を受けていた。

ふたりを止めなくていいのか。フレイムタンは立ち上がることの出来ないふたりへと問いかける。だってほら、あの顔を見てごらん。アカズキンが見つめるのは、切れた唇から血を流すヒメヅル。ほら、あの子もさ。サニィもまた血で前髪を染めていた。

互いに炎を燃やし、そして互いに血を流すふたり。きっとあの子たちは戦場で出会ってなかったら、素敵な友達になれたんじゃないかな。だが、ふたりが出会ったのは戦場だった。だからきっと、あの子たちはあの子たちの覚悟を決めてるんだよ。

ヒメヅルとサニィ、ふたりの頭の中には、すでに戦争の二文字は消えていた。きっとね、あのふたりは全力で喧嘩してるだけだから。構えた刀と杖。そして、最後の一歩を踏み出すと共に、踏み出された最後の言葉。生まれ変わったら、友達になろう。

▲上へ戻る

聖戦:水の戦

キミたちは本当に浅はかだよ。アリスの猛攻に耐える一方のオノノコマチ。だが、そんな戦況を変える一太刀。なんで、キミがそこにいるのかな。体勢を崩したアリス。一瞬の隙を突いた小さな一太刀。それはアイスブランドの裏切りの一太刀だった。

さっさと殺しなさいよ。アリスの体を縛るオノノコマチの艶やかな水。それは出来ない。否定するオノノコマチ。やっぱ気に入らない、キミたちは。それでも止めをささないオノノコマチ。だって、私は約束したの。もう、誰も死んだらいけない、って。

甘いよ。鳴り響く冷たい銃声。打ち抜かれたオノノコマチ。解けた拘束。そして次に向けられた銃口。どうしてそこにいるか、理由を教えてもらおうか。アクアプスの冷たい銃口は、親友だったはずの男へ、冷たい視線と共に向けられていた。

俺はただ、自分の瞳で確かめたかっただけさ。アイスブランドが追っていた罪人と、その罪人の結末。俺が信じていた道は否定された。だから反対の世界を見たかっただけさ。そして構えた氷の刃。それが理由なら、僕が君を撃つ理由に値するみたいだ。

なんだか調子狂っちゃったじゃない。アリスは情けをかけられたのではなく、本心であると気づいていた。不思議な世界ね、本当に。それはオノノコマチへの賞賛。そうね、世界は私達の理解できない感情で動いているの。それが、愛ってことかしら。

それなら、私はその愛ってヤツをつらぬくだけよ。ムラサメは刃を抜く。引いてください、私が相手をします。立ち塞がったレイニィ。そして戦場を覆う雨雲。ありがとう、私をいい女にしてくれて。いきます。こうして、再び水の戦いが始まった。

私が愛する人と生きる世界に、あなた達は必要ないの。ムラサメの水を滴らせた刃がレイニィを襲う。そう、私はふたりきりで過ごせる世界を求めてるの。姉妹という絆を越えた愛。だから、死んでもらえるかしら。だが、レイニィは刃を弾いてみせた。

私の愛する人はみんな、もう二度と会えなくなりました。レイニィの胸を締め付ける旧友の声。みんな、人間への愛を知ってしまったせいで二度と会えなくなりました。だから私は、信じません。勢いを増した大粒の雨は、レイニィの頬を濡らしていた。

愛を求めるムラサメと愛を憎むレイニィ。あなたの友達が可哀そうね。どうしてですか。きっと、その友人達は、最後まで愛をつらぬいたのよ。違う、人間に惑わされただけなの。動揺する心。あなたにいいことを教えてあげる。今から私を愛しなさい。

弾かれた杖。振り上げられた刃。私を愛したのなら、私の為に死になさい。そうすれば、あなたもわかるでしょう。愛する人の為に死ねるという喜びが。そこにあったのは歪んだ愛。そして、振り下ろされた刃はレイニィの心を斬り裂いたのだった。

▲上へ戻る

聖戦:風の戦

起きているのか、眠っているのか。そのどちらに関わらず、イバラを守るように無数の蔦が覆う。あなたはいったい、なにがしたいっていうの。襲いかかる蔦をヨウキヒは問う。私はただ、眠りたいだけ眠りたいだけよ。それはただの寝言だった。

寝言は寝てからって、あなたにぴったりな言葉ね。そして寝言の会話は続く。だから私は、別に勝つことに興味はないの。だったら、いますぐ出ていきなさい。ヨウキヒの抗戦は続く。私達が出ていったら、そこに安らげる眠りは訪れるのかしら。

イバラの問いに深い意味があったのか、それは本人にしかわからない。だが、ヨウキヒの思考を巡らせるのには十分だった。日が暮れるまで遊び、疲れ、そして、ただ眠る。思い出していたのは、いつも4人ひとつの布団で夢を見ていた幼き日だった。

ありがと、あなたのおかげで思い出せた。ヨウキヒが纏う風向きが変わる。私はもう一度、取り戻したかった。そこにあったのは、ひとりの妖精として個人的な感情。だから私は、この戦いを終わらせて、そしてもう一度みんなで眠れる日を取り戻す。

追い風が撒き散らす無数の蔦。だが、そんな追い風が止んだとき、蔦の中心には優しいそよ風に撫でられながら、深い眠りに落ちたイバラがいた。なんだか私ひとり、馬鹿みたいね。そして、疲れ果てたヨウキヒもまた、深い眠りへ落ちていくのだった。

ひとつの風が止んだとき、また新たな風が吹き荒れようとしていた。怖気づいたのかと思ったぜ、ベイベ。待ち構えていたウィンディ。知ってるか、主役ってのは、遅刻して現れるもんだぜ。そして現れたのは、果たし状を手にしたヤスツナだった。

こっちからいくぜ、ベイベ。戦場に吹き荒れる風。ずいぶんご機嫌な風だな、笑ってやがるぜ。刀を構えるヤスツナ。なに言ってんだ、今日の風は泣いてるぜ、ベイベ。そして、同行していたウィンドベクターはふたりの会話を理解することを止めた。

風の泣き声が聞こえないなんて、漢失格だぜ、ベイベ。泣き声のような風を放つウィンディ。そんな風を踊るように斬り捨てるヤスツナ。あぁ、俺に斬られて笑ってやがる。理解不能の戦い。だが、それは確かに世界の行く末を握る戦いのひとつだった。

もう止めとけよ、ベイベ。お前の方こそ。無数の傷口に染み入る風。漢には引けない戦いってヤツがあるんだぜ、ベイベ。奇遇だな、俺も引けない戦いってヤツなのさ。風が泣いているか、笑っているか、それはふたりが命を張るに十分な理由だった。

そして、互いに纏いし風の果て、倒れたふたりが最後に見上げたのは空。そこには相変わらずの風が吹いていた。そんな風がふたりの頬を撫でたとき、ふたりはひとつの答えに辿りつきながら瞳を閉じる。あぁ、風は泣きながら笑っていたのだ、と。

▲上へ戻る

聖戦:光の戦

輝かしい光をさえぎったのもまた、輝かしい光。どういうつもりか知らないけれど、私の邪魔はさせない。舞い降りた神へと兵を差し向けたシンデレラ。待ってよ、私はただの傍観者だから。天高く舞い上がり、そして光神はふたりを見下ろしていた。

そして神に見守られるように、また監視されるかのように、再開した光の戦い。そうそう、ふたりとも頑張って争ってね。光神が何を考えているのか、それを考える余裕が生まれる隙がないくらい、ふたりの瞳にはお互いの姿だけが映し出されていた。

ひとりが膝をつけば、もうひとりも膝をつく。ひとりが血を流せば、もうひとりも血を流す。いい勝負じゃない。だけど、これじゃよくて相打ちってところかな。それじゃ、そろそろ。光神は神刃を取り出し、そして、狙いを定めたのだった。

それは一瞬だった。カタリナが背後に感じた力。神刃が光神の手を離れた直後、神刃は体を貫いていた。やっぱり、それがあんた達のやり方なのね。崩れ落ちる両膝。神刃はカタリナの背中を追い越し、そしてシンデレラの体を貫いていたのだった。

違う、私達は違うんです。カタリナの心からの否定。地上に舞い降りる光神。やっぱり、それがあんた達のやり方なんだな。おっと、怖い怖い。光神の背後、そこにはすべてを見通したシャイニィが。そして、さらにもうひとつの光が現れるのだった。

あなた達は、いまも歪な平和を続けていたんですね。横たわるシンデレラを見つめ、そして怒りをあらわにしたライキリ。この情況じゃあ、誤解は解けそうにないな。そしてシャイニィは光神から距離を取る。いいぜ、小僧、俺が子守をしてやるよ。

シャイニィを襲うライキリの刃。良い太刀筋だ、うちの怠け者に見習わせたいね。無駄口は聞きたくありません。もうひとつの刀を引き抜くライキリ。いい気迫だ、それに比べてうちの怠け者は。くしゅん。その頃、イッテツは部屋でくつろいでいた。

だが、まだまだ小僧だな。振り回される杖と、振り回される体。大丈夫、君はひとりじゃないんだよ。ライキリの隣には、銃を構えたライトイーグルがいた。だったら、俺も混ぜてもらおうか。シャイニィの隣には、刀を構えたライトブレードがいた。

仇をとりたかったんじゃないのか。それはライトブレードがシャイニィの隣にいる理由。だけど、どっか行っちゃったみたい。いつの間にか姿を消した光神。だからさ、俺をハニーに会わせてくれよ。ライトブレードの視線の先にはライキリがいた。

なんだよ、小僧同士の喧嘩か。シャイニィはふたりを見守っていた。どうしたんだ、裏切り者の俺を、始末しないのか。真っ直ぐな瞳のライトブレード。ただ立ち尽くすライキリ。訪れた静寂。そして、その静寂を終わらせたのは、一発の銃声だった。

▲上へ戻る

聖戦:闇の戦

終わるかに見えたふたりの戦いは、次の夜が明けようとも終わることはなかった。なぜ、そこまでして戦うんですか。そんなふたりの戦いを、ひとり残ったヘンペルは見つめていた。もう、なにをしても無駄だというのに。どうして戦い続けるんですか。

私は大切な友を失った。だから、これは弔い合戦なのよ。大切な友達、か。クレオパトラは失踪した友人を思い浮かべていた。それだったら、私にも戦う理由があるの。私はいまでも信じてる。だから、いつか帰ってくる場所を守らなきゃいけないのよ。

ねぇ、知ってるかしら。守るべきものを持つ者ほど、弱いのよ。それは大切な誰かを失くした者の主張。知らないのかしら、守るべきものを持つ者ほど、強いのよ。それは誰かの帰りを待つ者の主張。だから私は倒れない。クレオパトラの瞳に光が宿る。

お願い、最後に力を貸してくれるかしら。カグヤの背後から飛び出してきた7つの小さな影。あたり一面に撒き散らされる毒。だが、その毒が奪うのはふたりの体温。さぁ、共にここで散りましょう。それで帰れる場所が守れるなら、私は構わない。

どうして、なぜでしょうか。ただ、争うふたりを見つめ続けるヘンペル。彼女は、いまでも私のことを。そして生まれた小さな動揺。よぉ、アンタのこと探したぜ。ヘンペルの背後に現れたビヨンド。小さな動揺は、大きな可能性へと変わるのだった。

ムラマサがその場所に辿りついた時、カグヤは横たわっていた。なによ、簡単に倒れちゃって。そして、その声に重なる言葉。そうね、みんな大したことないわね。少し遅れて現れたクラウディは、横たわったクレオパトラを横目に見つめていた。

死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね。クラウディがかざした杖は再び夜を呼んだ。殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す。ムラマサが引き抜いた刀は妖気を死霊を呼び覚ました。さぁ、殺し合いを始めましょう。

闇に包まれた戦場で行われていたのは、互いに守りを捨てた攻戦だった。あんたなんか、片手で十分よ。ぶら下がるクラウディの片腕。それなら私は、片足で十分ね。引きずられるムラマサの片足。そこに存在していたのは、純粋な殺し合いだった。

みんな死ねばいい。魔物への怒りを顕にしたクラウディ。あんたらの女王だって、付き添う闇精王だって、みんな大嫌い。杖から発せられた闇が形を成したのは大鎌。私がすべてを切り裂いてあげるのよ。そこには残された力すべてが込められていた。

私はこのときを待っていたの。振り下ろされた大鎌が貫くムラマサの体。崩れる残された片方の足。私の勝ちよ。口角を上げたクラウディ。だが次の瞬間に変わる表情。ムラマサ流、抜刀術。怨みは私の好物よ。そして、ふたりの戦いは終わりを迎えた。

▲上へ戻る

聖戦:無の戦

無益な争いはしたくないんだ。スノウィは投げやりだった。気にいらねぇなぁ、テメェみたいな漢は。僕らが争ったところで、きっとなにも変わらないよ。それじゃあ、目を背けるっていうのか。違うよ、なにも僕が戦わなきゃいけない話じゃないしね。

だったら、さっさと斬られて退場しろよ。ナキリは鞘に手を添え、そして一直線に足を運ぶ。そして引き抜かれた刀。だが、その刃を弾いたのは杖ではなく、もうひとつの刀だった。ずいぶんと、大きくなったじゃねぇか。ご無沙汰してました、師匠。

それがテメェの見つけた誠か。ナキリは刀を大きく振り払う。私は気づいてしまったんです。ムミョウガタナが立て直す体勢。だから私は、もうひとつの世界を見てみたい。勝てるはずのない相手を前に、それでも名も無き刃は輝きを放つのだった。

それでこそ俺の弟子だ。偽の一文字を背負ったナキリは愛弟子を褒め称えた。違う、私は誠を背負うんです。だが、その想いは虚しくも散る。立ち上がることの出来ないムミョウガタナ。太刀筋が語ってるぜ、俺と戦い、そして越えてみたかったってさ。

やっぱり師匠は全部お見通しなんですね。ムミョウガタナが見た誠、自分へ正直な生き方。ある意味テメェは正直者さ。ナキリは少し悲しそうな笑顔を浮かべた。これが漢の生き様だ。そして、スノウィへと向られた刃。そういうの、僕は嫌いだから。

▲上へ戻る

聖戦:過去と今

まさか、あなたが直々に乗り込んで来るとはね。ええ、みんなが道を作ってくれたのよ。ファティマが辿り着いた美宮殿。そして、そんなファティマに対し、ヴィヴィアンは落ち着きをみせていた。さぁ、私達は私達の戦いの続きを始めましょう。

あの棺は、あなたの仕業なのね。ファティマは問う。例え否定してたとしても、あなたはそれを信じるかしら。それがヴィヴィアンの答え。私としたことが、愚問だったわね。そう、誰かが私達に口実を与えてくれた、それだけで十分だったのよ。

だから私は、ずっと機会を伺っていた。もう一度、あなた達と戦争をすることを。その為に女王様を逃がしてあげたんだから。そして、私達は新たな女王を受け入れた。本当はそれで十分だった。だけどね、人質が欲しかったのよ。そう、王様よ。

すべての駒が揃った。だけど、それをあなたは壊した。それは堕魔王の復活だった。ねぇ、どうしてかしら。どうして彼はあなた達と一緒にいるの。だから、私が正してあげるのよ。あの日の彼は王様だった。だから私は、あの日の続きを始めるの。

あの日の私たちの王様は正しかった。私はこの戦争に勝って、それを証明する。そして、いまの彼は間違っていると証明する。今も昔も、ファティマの心はかつての魔王の姿に縛られていた。だから、鞘を探していたのね。ヴィヴィアンはそっと呟いた。

ファティマが鞘の力を使い、再生させたかったのは、かつての魔王そのものだった。だが、それを待たずして蘇った堕魔王。そして、そのヴラドの体も、命も、すべて仮初に過ぎなかった。私の手で、彼を蘇らせるのよ。そう、気高き魔界の王として。

だとしたら、やっぱり負けるわけにはいかないね。ヴィヴィアンはファティマの理想を否定した。いつかは、こうなるってわかってた。だけどね、私にもね守らなきゃいけない子たちが沢山いるの。だから、いまこそすべての因果を断ち切らせてもらう。

もし魔界が敗北し、今度こそ完全なる敗北が訪れたら。それは、統合世界における古から続く争いの終結であり、平穏へと繋がる。だから、私達にけしかけさせたのね。ヴィヴィアンの無言が意味した肯定。きっと、あの日の彼もそれを望んでいたから。

だけど、王様を追放したのはあなたたち自身じゃない。賞賛を浴びることなく、堕ちた妖精王。そうする以外に、方法がなかったの。あの日のヴィヴィアンはすべて気づいていた。オベロンが天界を愛し、そして天界の為に戦っていたということを。

だから、私達は嘘をついた。嘘をつき続けることで、彼の守りたかった平穏を守ってみせた。彼には、もうすべてを忘れて、ただ静かに生きて欲しかった。なのに、あなた達がまた彼を戦場へ連れ出した。だから私達が勝利を掴み、そして彼に平穏を。

繋がる過去と今。互いに否定するのは今。そして、肯定するのは過去。想いが交わることはなく、交わるのは刃ばかり。いくら血を流そうが、いくら骨が折れようが、一歩も引くことのないふたり。だが、ひとつだけふたりが共にする想いがあった。

それは、例え自分が今に散ろうとも、過去が肯定されるならそれでいい、と。あがる息と熱を持つ傷口。きっと、次が最後の一撃。みんな、未来の天界をよろしくね。そして、ヴィヴィアンが込めた最後の願い。だが、それを打ち砕いた一言。待てよっ。

親子の話に水をささないで頂戴。ファティマの前に割って入ったのはリオだった。その後ろ、ヴィヴィアンを後ろから抱き止めたライル。天界の平和だとか、因果を断つとか、こんなやり方しか出来なかったのかよ。それは怒りであり、悲しみだった。

オレさ、全部知ってたよ。アイツとの出会いも。歳が近いオレを育てたのも、オレに戦い方を教えたのも、すべてはアイツを、誰かの子供を守る為だったんだろ。ごめんね、私の汚れた手で育てちゃって。それこそが、ヴィヴィアンの罪の意識だった。

だけど、最後くらいは世界の為に戦った立派なお母さんでいさせてもらえるかな。そして、ヴィヴィアンが振り払うライルの両腕。もう、頑張らなくていいんだ。えっ。そして両膝から崩れ落ちるヴィヴィアン。今まで育ててくれてありがとう、母さん。

大剣を握り直し、合図を送るライル。約束を忘れないで。共に同じ男を殺すと誓った約束。あぁ、オレは自由になるんだ。消えるリオの影。そして、なぜか目を見開いているファティマ。それはライルの背後に、更なる影が生まれていたからだった。

▲上へ戻る

聖戦:ふたりの女王

美宮殿の玉座にひとり残されていたヒカリの元へ現れた訪問者。そして、ヒカリはその訪問者と初対面であるにも関わらず、それが誰なのか瞬時に理解した。そして吐き出されたのは、ふたりの体に流れる血を肯定する言葉。はじめまして、お姉さん。

そのすべてを受け入れたような顔、気に入らないわね。玉座のヒカリへと近づくモルガン。当然、知っているのよね。それはふたりの体に流れる妖精王の血。私はあの男が生まれる前に、創られた。そして、私は兄が生まれた後に創られたんだよね。

すべては禁忌の血の研究の為。そして、その研究の為に生まれたふたりに、禁忌の血が受け継がれることはなかった。だから私は必要とされなかった。そして父を憎むことで自分の存在を肯定したモルガン。あなたは、いったいどう思っているのかしら。

私は、ありがとう、と伝えたい。だから、私はいまここにいる。父が目指した世界を創る為に。それは堕ちた妖精王への肯定。父がいたから私が生まれ、沢山の友達と出会えたんだもん。そして、そんなヒカリに会いに、「友達」がやってきたのだった。

開かれたのは王の間の扉。一歩ずつ、一歩ずつ、響き渡る足音。うつむくことなく、ただ真っ直ぐに前を見つめ、紫色のストールだけが揺れる。久しぶりね。うん、久しぶり。こうして、ふたりの女王の再会は、ひとしれず静かに果たされたのだった。

単刀直入に言うわ、いますぐ負けを認めなさい。ヒカリを見つめる視線。断るわ。ユカリを見つめる視線。交わったふたつの視線の間に生まれる緊張。言葉で分かり合えないのなら、することはひとつしかないわね。ユカリは大鎌を構えるのだった。

私はユカリちゃんの本当の想いを知りたいの。ヒカリが取り出した大剣。私の想いなんて、私の中には存在しない。そう、私の中に存在するのは、女王としての想いだけよ。ユカリを締め付けるのは、大好きだったひとりの小さな女王の想いだった。

私は女王として、いまここにいる。それなら、私も同じだよ。そこにいたのはまぎれもなく、幼いながらも、女王としての責務を全うしようとするふたりの女王だった。だから、お互いのすべてをかけて争いましょう。どちらの女王が、正しいのかを。

私ね、いまとっても幸せだよ。ヒカリが弾くユカリの鎌。だって、こうしてユカリちゃんとぶつかり合うことが出来たから。ヒカリは自分が飾りであることに気がついていた。だけどね、いまの私は、誰がなんて言おうと、天界を守る女王なんだから。

くだらない話に付き合う気はないわ。ユカリの鎌がさらうヒカリの前髪。ただ私は女王の責任を果たすだけ。ユカリもまた、自分が飾りであることに気がついていた。だから、私は天界を壊す女王になるの。そして、その先の未来で私は―。

ふたりの女王が見つめた未来、それは形は違えど、かつてのふたりの王が目指した未来そのものだった。それじゃあ、ユカリちゃんはやっぱり。だから、私が統合世界を統べるのよ。そして、神へと反旗を翻すのよ。そう、すべてはひとりの少女の為に。

それだけ大切だったんだね。あなたになにがわかるの。わかるよ。わかったようなこと言わないで。だって、私はユカリちゃんが大切だもん。聞きたくないわ。聞いて。嫌よ。どうして。もう、あとには戻れないの、私はあの子が信じた私だけを信じる。

ひとりの女王は、光り輝く理想を掲げた。それは誰しもが幸せになる世界。誰かが言った。それは現実から目を逸らしているだけだと。だが、それでも理想だけを追い求める女王がいたとしたら。それは誰しもが出来ることではなかった。

ひとりの女王は、闇をはらんだ現実を掲げた。それは誰しもが辛さに耐える世界。誰かが言った。それは理想を諦めてしまっているだけだと。だが、それでも現実だけを追い求める女王がいたとしたら。それは誰しもが出来ることではなかった。

理想と現実、光と闇。表裏一体。だからこそ、ふたりは同じだった。背中合わせで見つめる未来で繋がる想い。もし、ふたりが手を繋いで歩くことが出来たら。それこそが、誰しもが望む未来。現実から目を逸らさず、そして理想を追い求める未来。

やっぱり、ユカリちゃんには勝てないか。すでに立ち上がることすらままならないヒカリ。だったら、負けを認めなさい。ユカリが突きつける最後の言葉。それでも、私は負けを認めることは出来ない。だって、こんな私でも天界の女王なんだから。

ねぇ、どうしてふたりが争わなきゃいけないの。一歩も引くことのないふたりの女王を見つめる人影。アイツらは、小さいけれど、立派な女王様だってことだよ。だから全部が終わったとき、オマエが慰めてやれよ。いままでお疲れ様、ってな。

きっと、ユカリちゃんなら大丈夫かな。ヒカリが差し出した小指。どういうつもり。私とは、きっと手なんか繋げないよね。だから、指だけ繋いで欲しい。そして、約束をしよう。ユカリちゃんが、この世界のみんなのことを、幸せにしてみせる、って。

▲上へ戻る

聖戦:竜神

俺に出来ることなんて、初めから決まってたんだ。ヒスイはただ天界でひとり、そのときを待っていた。そして、そのときは訪れる。やっぱり、君が邪魔をしに来たんだね。いいや、違う。オマエらが邪魔をしに来たんだ。今も、そして、あのときもな。

勘違いしないで、あれはボクの仕業じゃないよ。ロキが否定した在りし日の聖戦を左右した神の悪戯。もっと大きな意志が働いたのさ。竜でありながら、神の血を引く君ならわかるだろう。すべてはそう、ボクたちの創醒の聖者の気の向くままに。

ねぇねぇ、私達を敵に回したいのかな。ロキのすぐ側には、シャルラ、マダナイ、スフィア、ロプトの4人がいた。誰からでもかかって来いよ。棍を構えたヒスイ。どうして、そんなにムキになるのかな。俺はただ、あのふたりの邪魔をさせたくない。

それはヒスイが抱いていた後悔。不本意な形でついてしまったかつての聖戦の決着。だから俺は、思う存分、あいつらに好き勝手戦わせてやりたいんだ。世界の行く末なんか、そんなのどうでもいい。それがヒスイのたったひとつの願いだった。

その大口、いつまで叩けるかな。マダナイの研がれた爪が狙う首。余計な仕事を増やさないでくれ。スフィアが奪った手足の自由。食べちゃっていいよ。手綱を離したシャルラ。さぁ、我々は進みましょう。ロプトはロキの進むべき道を示すのだった。

さすがの竜神も、これだけの数が相手じゃ惨めなものだね。だが、それでも立ち上がるヒスイ。だから、誰も邪魔するんじゃねぇって。なに言ってるんだい、邪魔をしているのは君じゃないか。そうだよ、これも世界の決定のひとつなんだから。

誰が世界を決めるのか、それは個の意志であり、また全の意志である。どうせ掌の上なんだから。明日を創るのは、いつだって神様なの。ロキが踏みにじるヒスイの心。だから、君は退場してよ。それじゃ、オヤスミ。だったら、ワシも眠らせてくれよ。

ったく、ワシの寝室の隣でドンパチせんでくれ。そこに現れたのはイッテツだった。いいんだよ、わざわざ起きてこなくて。こんな状況で誰が寝れんだよ、ボケが。イッテツが引き抜いた刀。目を見りゃわかる、ワシが斬るべき敵は、おぬしらの方だな。

悪い、助かるよ。ワシはただ、ワシの休暇の為に戦うだけじゃ、勘違いすな。変わる風向き。で、ワシに斬られたい奴から頭を差し出せ。だが、次の瞬間。ぐぬっ。なんだ、大したことないね。悲鳴を上げたのは研がれた爪に裂かれたイッテツだった。

おい、大丈夫か。慌てて駆け寄るヒスイ。油断しただけじゃ。明らかに運動不足だった。何人集まろうと、私たちに勝てないんだよ。おどけてみせるシャルラ。それならさ、この数を相手に出来るのか。直後、無数の魔物魂が辺りを埋め尽くしていた。

よぉ、覚えてるか。リィナの挨拶。それはかつての上司の友へ、そして、かつての好敵手へ、ふた通りの意味をはらんでいた。心強いよ。ヒスイが取り戻した活気。知らん。そっぽを向いたイッテツ。おい、それじゃかつての鬼精将の異名も泣いてるぜ。

そんな名前、聞いたことない。さらにそっぽを向いたイッテツ。まぁ、いいさ。リィナが引き連れた魔物魂がふたりの体を包みこむ。不思議と癒える傷。薬学部特性回復薬、高くつくぜ。だけど、どうして。それは戦争最中のリィナに向けられていた。

いまここで、アンタを助ける。それが俺なりの、王への忠誠さ。その王が、どちらの王を示しているのか。そんな質問は無粋だった。だったらワシも、王様に恩を売っとくか。そのとき、三人の目的は一致した。誰にもあのふたりの邪魔はさせない、と。

あまり、調子に乗らないほうがいい。スフィアの牽制。これは世界評議会の決定であり、世界の決定の一部なのだから。んなこと、初めから知ってたさ。オマエらの本当の目的は、この混乱に乗じて―。それ以上は、口に出さない方が身の為だ。

ヒスイの言葉を遮ったのはベオウルフだった。順調に進んでるかな。ロキが求めた報告。ええ、予定通りにコトが進めば、恐らくは。内緒話すんなって。そして、ヒスイは答えを告げる。オマエらは、いまからディバインゲートを解放するつもりだろう。

ご名答。響き渡る渇いた拍手。争うふたつの世界、力を抑えきれなくなったふたりの王。そんな力がぶつかり合ったせいで、世界の半分が消し飛びました。誰も疑いはしない話さ。例えそれが、彼らの力ではなくディバインゲートの力だとしても、ね。

だったら、その目論見は外れさ。リィナに届く隠者の報告。そして、同時にロプトへ届く堕闇卿からの報告。そんな、まさか。そして、リィナはヒスイへ告げる。そっちの方は任せとけ。だから、オマエは目の前の邪魔者を、こっから追い出してやれ。

どっちが勝つかな。ヒスイは両手を伸ばしていた。どっちでもいいか。ヒスイは両足を伸ばしていた。だからオマエら、好き勝手暴れろ。ヒスイは空を見上げていた。俺は、今度こそ守れたんだ。ヒスイは誰もいなくなった戦場で、瞳を閉じたのだった。

▲上へ戻る

聖戦:裏側・竜界

足手まといなら言ってね。懐かしい声。一緒にいてくれるだけで、嬉しいよ。ミドリは満面の笑みで返す。もう、戦うことは出来ないかもしれない。だけど、まだ彼にこの命の恩返しが出来てないんだ。ふたりは竜王家の力が眠るほこらを目指していた。

ドロシーは長い眠りから目を覚まし、竜王家に伝わる伝承を追い続けていた。竜界のどこかにあると伝わるほこらに滴る最古の竜の血。その血が決める未来。もし伝承が真実なら。踊る胸。だが、ふたりの長い旅路の果てに、俯いた少女がいたのだった。

ねぇ、どうしてそんな顔をしているの。ミドリが声をかけたのは、ただ立ち尽くしていたカナン。そして、カナンはただ首を横に振る。途切れた希望。オマエら、ずいぶん懐かしい御伽噺を知ってんだな。そこには、更なる招かれざる客がいたのだった。

探したぜ、久しぶりだな、お姫様。現れたヴェルンはカナンを見つめる。棍を構えたミドリの背後、突きつけられたファブラの刃。安心しろ、危害は加えねぇよ。俺達は連れて行って欲しい場所があるだけだ。だから、少し道案内をしてくれねぇかな。

私は、それでも諦めない。だから、行ってくるね。ドロシーはひとり奥へと。ミドリとカナンはヴェルン達と共に。そして五人が辿り着いた場所。鳴り響いた避難警報。さっさと道を開けろ、俺様の帰還だ。そこは王も、竜神も不在の古宮殿だった。

かつての暴君、ヴェルンの登場に震える古宮殿。な、なにをしに来た。立ち塞がるのは、立ち上がることすらままならないリヴィア。怪我人は寝とけって。俺に勝てると思う愚か者がいるなら今すぐ出て来い。古宮殿は物音一つ立てず静まり返っていた。

満場一致、ってことでいいんだな。そしてヴェルンが腰をかけた玉座。それじゃあ、俺様からの最初の命令だ。いいか、よく聞けよ。ただ、口を閉ざして聞くことしか出来ない古宮殿の竜達。いまこの時をもって宣戦布告をさせてもらう。さぁ、戦争だ。

▲上へ戻る

聖戦:裏側・常界

よっし、ここにも設置完了だぴょん。慌しく常界を駆け回っていたのは助手兎を連れて天界を離れたカルネアデスだった。助手君、助手君、次はどこへ行ったらいいぴょん。子供の落書きのような地図を辿り、二羽はぴょんぴょん行脚を続けるのだった。

ここで最後ぴょん。二羽のウサギが地図に記されたバツ印に辿り着いたとき、もう一羽のウサギもその場所へ辿り着いていた。こそこそ隠れて、なにしてるのかしら。杵を振り上げたコスモ。常界でもまた、妖精と魔物が争いを始めたのだった。

黒い兎と白い兎、互いに生まれた世界とは異なる世界の為に戦う二羽。ウサギは幸せの象徴なんだぴょん。それなら私は、その裏側の不幸を届けてあげるわ。表裏一体の世界と戦い。だけど、いまこの戦いは僕に預からせてもらえないかな。

二羽のウサギの戦いを制止したのはデオンだった。王の秘密機関が、こんな場所でいったいなんの用かしら。取引をさせてもらいたい。それは王の為であり、王ではない男から与えられた任務。きっと、君たちは彼を必要としているんじゃないかな。

デオンの呼び声と共に現れたのは、口を布で覆った男だった。久しぶりだな。カルネアデスへ、懐かしい声をかけたサフェス。かつて互いに教団にいた者同士。そして、そんなサフェスが連れていたのはもう一人の懐かしい男、シュレディンガーだった。

ちゃんと説明してもらえるかしら。コスモはそこにいなかったはずの登場人物を睨んでいた。その説明なら、もう必要ありません。デオンが咄嗟に構えた刃。だって、今から刈られるのですから。そして、ベオウルフは六人の画伯を残し消えたのだった。

デオンの前に立ち塞がったレオナルド。この筆の前では、未来は意味をなさない。レオナルドが左へ払えば左を向く。右へ払えば右を向く。身動きのとれないデオン。だけど、あなたが縛っているのは過去の僕に過ぎません。神の力を過信し過ぎるな。

直後、レオナルドの首筋に突きつけられた対の短刀。我らが王の秘密機関をあなどらない方がいい。あなた達は神へと屈した。だが、僕らの王は、神へと反旗を翻した勇敢な王様なんだ。デオンが仕える王は、立場が変われど、ヴラドただ一人だった。

こんにちは、先輩。シュレディンガーへ向け、陽気にお辞儀をしてみせたマルク。僕が探した過去に先輩はいたよ。だけどね、僕の描く未来に、先輩は必要ないんだ。そう、もう先輩は過去の登場人物なんだよ。だから、早く退場してもらえないかな。

シュレディンガーの戦意は失われていた。自分がなぜここにいるのか、自分がなにをすべきなのか、そのすべてが抜け落ちていたのだった。ほらほら、先輩。もっともっと、いたぶってあげるからね。そんな二人の間に割って入ったのはサフェスだった。

私たちふたりを、ひとりで相手するっていうの。シュレディンガーを守りながら戦うサフェスへと襲い掛かるフィンセント。私はあなた達を許しはしない。その言葉には魔界軍を率いるオベロンも含まれていた。私は、彼のせいで都合の良い犠牲に。

防戦一方、ただ耐えることしか出来ないサフェス。そろそろ、あなたには犠牲になってもらいます。フィンセントが突きつける銃口。っていうか、都合の良い犠牲って、そんなに安いもんじゃないわよ。銃口を塞ぎに、偽りの翼は舞い降りたのだった。

あら、私の相手は裏切り者かしら。カルネアデスのとある装置の設置作業を静止したクロード。私達の彩りを、邪魔してくれたら困るのよね。それは聖暦の画伯が描く未来。あと少しなの。だから、あと少しの間だけ、大人しくしていてもらえるかしら。

もちろん知ってるよ、あなた達の狙いがなにか。笑顔の消えたカルネアデス。この混乱に乗じて、アレを解放するんでしょ。ええ、だから諦めなさい。やーだぴょん。笑顔に戻ったカルネアデス。それは遙か彼方のビヨンドの笑顔を見つけたからだった。

私が欲しいのは富だ。さぁ、互いのすべてを賭けた戦を興じようではないか。髭を撫でたサルバドール。私と賭け事なんて、いい趣味じゃない。カードを開いたコスモ。どうせ、未来は決まっている。互いにベットしたのは、自分が勝利する未来だった。

私は勝負に負けるのが嫌いなの。投げられたサイが示した数は6。グッドラック。コスモの杵に宿る最大の力。戦う相手が悪かったね。サルバドールが上書いた未来の数は1。だったら、これでどうかしら。コスモは無数のサイをばら撒いたのだった。

あなたは、私の相手をするです。パブロが構えた筆。だが、すでに泣き出しそうなコガネ。さぁ、行くです。逃げるコガネ。待つです。それでも逃げ続けるコガネ。うーぅ、私は戦いとか苦手なんですよお。迫り来る脅威に、涙を流すしかなかった。

さぁ、これで終わるです。パブロが描いた未来に、コガネの逃げる道はなかった。だが、それでもコガネは満足そうな笑顔を浮かべた。所長、私は最後まで頑張れましたよ。そう、コガネは逃げながらも、最後の起動装置の設置を完了させていた。

都合のいい犠牲を、安売りしないでくれるかな。戦場に舞い降りたラプラス。どうして、君までここに。サフェスに生まれた疑問。どっかの誰かさんが、誰かの為に頑張ってるみたいだからさ。幼き日の友が動かしたのは聖戦の行く末だけではなかった。

早く私に掴まって。ラプラスが手を差し伸べたのは、かつて聖暦の天才と称えられたふたり。だが、そんな簡単に戦線離脱が許されるはずはない。画伯が描く未来、前へ進めば後ろへ進む。なによ、これ。そんな三人の真上に、自律の機体が現れる。

カゲロウの色の無い瞳は、ただカルネアデスを見つめていた。絶体絶命ってやつじゃない。ラプラスの額に滲む汗。ううん、きっと違うぴょん。そして、カゲロウが差し出したデータディスク。そのディスクに書き記されていた言葉。炎才の息子より。

不完全なリブートながら、任務を遂行したカゲロウ。マスターハ、先ニ未来ヘ進ミマシタ。ダカラ、ソノ道作リオ願イシマス。カゲロウの炎は偽りの未来を燃やし、デオンは王への忠誠を燃やす。コガネは所長の為に最後まで立ち続けたのだった。

そろそろ教えてもらえるかしら。画伯の攻撃をかわしながら、サフェスへと詰め寄るコスモ。じきにわかるさ、その時が訪れれば。やっぱり、あんたはくえないわね。だが、そんなコスモも、いまの自分達がここで戦う意味に喜びを感じていたのだった。

みんな、待っていたよ。そこは幸せの白兎研究所の常界支部。そこにはメビウスがいた。偶然か必然か、集いしは聖暦の天才。そして、そこにいない天才が解放したディバインゲート。だが、その解放が予定より数刻遅れたのもまた、聖戦の因果だった。

早く席について。それ以上の説明は必要なかった。モニターに映し出されるのは各地へ設置された起動装置。中央には無数のコードに繋がれたレプリカが。シンクロ率、240%を突破。お願い。対ディバインゲート用守護防壁キュリケイオン発動。

▲上へ戻る

聖戦:ふたりの王

しばらく見ないうちに、随分といい女になったじゃねぇーか。ただその場所で立ち尽くすことしか出来ないライルの側を通り過ぎ、そしてファティマへと歩み寄るのは現れた現天界の王、堕魔王ヴラド。いまでも俺の命令がきけるのなら、すぐ避難しろ。

ヴラドが口にした避難勧告。それがなにを意味しているのか、ファティマは瞬時に理解した。直後、背中越しに感じたのは憎悪の力。それがいまの、オマエなんだな。現れたのは、現魔界の王、堕精王オベロン。こうして、ふたりの王は再会を果たした。

見詰め合うふたりの王。そして、そのふたりの姿を見れば、互いに決めた覚悟は明らかだった。本当のことを、伝えなくていいのか。ライルが開いた口。いまさらコイツに、なにを伝えても、信じてもらうことなんか出来ねぇんだよ。それが天界の罪だ。

オマエらも、さっさとここから避難しろ。ふたりの王を前に、自分達ではどうすることも出来ないと悟ったライルとリオ。そして、いまだに言葉すら発することの出来ないファティマ。それじゃあ、始めようか。あの日の続きを、オレ達の戦いを。

向かい合うふたりの王。元魔界の王、そして現天界の王、堕魔王ヴラド。対するは元天界の王、そして現魔界の王、堕精王オベロン。そんなふたりを大切に想う竜神が守り抜いた、神も竜も、誰も邪魔することの出来ない最後の戦いが始まるのだった。

大分鈍ったんじゃねぇのか。オベロンの放つ闇をいとも簡単に弾いてみせるヴラド。そして弾かれた闇が壊す美宮殿の煌びやかな装飾。それじゃ、こっちからいかせてもらうぜ。現れた棺から生まれる無数の光の竜。さぁ、すべてを喰らい尽くしちまえ。

ひとりの王が攻撃が繰り出すたびに、美宮殿は悲鳴をあげる。激しい音と共に築かれる瓦礫の山。オレ達の舞台にしちゃ、ちょっともろすぎるんじゃねぇか。すでに失われた宮殿の姿。そして、そんな宮殿の上空でふたりの王は変わらず対峙していた。

天界の軍勢も、魔界の軍勢も、ただ上空でぶつかり合うふたりの王を見つめていた。いや、見つめることしか出来なかった。少しでも目を離せば、ふたりの姿を見失ってしまう。そう、ふたりの王の戦いは、目で追うだけで精一杯だったのだから。

かつて、光と闇がぶつかり合ったように、再びぶつかり合う闇と光。どうにか、持ってくれよ。ヴラドが気にかけたのは、仮初の時間。だが、その願いは散る。オベロンの放つ衝撃。それを受け止め切れず、ヴラドの体は地へと打ちつけられたのだった。

くそっ、こんなときに。それでもすぐに立ち上がるヴラド。そんなヴラドの瞳に飛び込んできたのは、ただ上空のオベロンを見つめる、天界、魔界の両軍勢だった。そして、ヴラドはその眼差しがなにを意味していたのか、すぐに理解したのだった。

ヴラドを地へと堕とすほどの圧倒的な力。そう、オベロンへ向けられたのは賞賛ではなく、ただの恐怖だった。そして、天界、魔界の両軍勢は同じときに、同じことを想う。互いに協力し、滅ぼすべき相手は、禁忌の血を引くオベロンではないのか、と。

兵の間に伝染する恐怖。そして、各々が構えた武器。向けられた先は、ただひとり上空に浮かぶオベロン。そして、それを止める女王も、参謀長もそこにはいない。誰かが命令を口にすることなく、ただ自然に、オベロンへと向けられていたのだった。

上空へと放たれた一撃。続くニ撃。止まらない三撃、十撃、百撃。数え切れないほどの刃。炎、水、風、光、闇、無。そのすべてが放たれる。そして、そのすべての攻撃が止んだとき、上空に浮かんでいたのは、そのすべてを受け止めたヴラドだった。

オベロンはただ、傷だらけのヴラドを見つめる。ヴラドはかすみ始めた瞳でオベロンを見つめる。そして、そっと問いかける。どうして避けようとしなかったんだ、と。すると、オベロンはこう答えた。俺は、生まれたときから、世界の敵なんだ、と。

再び上空へと向けられる無数の刃。だが、吹き抜けたのは突風。ちょっと、道を空けてもらうよ。そして、生まれた一本の道。お疲れさま、は、まだ言わない。だから、行ってらっしゃい。ミドリは、ふたりの小さな女王の背中を見送ったのだった。

ただ真直ぐに、堂々と胸を張り、ふたりの王の真下へと辿り着いたふたりの女王。誰の許可を得て、王に刃を向けているのかしら。大きく払われた右手。約束を弾いた左手が繋いだ右手。空へと伸びた左手。違うよ、あなたは世界の敵なんかじゃない。

ふたりの女王の叫び声、静まり返る天界。だが、飾りであるふたりの女王の言葉に耳を傾ける者は多くなかった。少しずつ、少しずつ、また刃が上空へと向けられる。オマエらは、自分らの王のことが信じられないのか。その言葉は再び静けさを呼んだ。

静けさを呼んだ正体、裏古竜衆を引き連れた紅煉帝ヴェルン。聖戦の最終局面、またしても訪れた第三勢力の介入。かつての聖戦の事情を知る者は、口を揃え、予期せぬ邪魔者へ非難の言葉を浴びせるのだった。だが、ヴェルンはその言葉にこう返した。

邪魔してんのは、いったいどっちだ。そしてヴェルンは天高く掲げた手を、地へと突きつける。揺れる天界、奪われる重心。民共はさっさとひれ伏して、黙って見届けろよ。そして、ふたりの女王の言葉は、しっかりとふたりの王へ届いていたのだった。

なぁ、聞こえたか。それでも、ただヴラドを見つめ続けるオベロン。あいつら、あの頃のオレ達よりも全然幼いんだぜ、なのに大したもんだよな。小さいながらも、女王であろうとしたふたりの女王。なのにさ、オレ達はいったい、何してんだろうな。

あの小さな女王はいま、オマエを「守る」選択をした。だったら、オマエがとるべき選択は、あの日のままでいいんだよ。そうさ、このオレと「戦い」、そして勝利すればいいんだ。それは、ヴラドが初めから決めていた「聖戦の結末」だった。

これ、あとで気が向いたら読んでくれ。そしてヴラドは一通の手紙を差し出す。オレからの、降伏文書だ。そして、ヴラドは天界全域に聞こえるよう、声高らかに宣言する。たったいま、この時をもって、オレは天界の王であることを辞めることにした。

続くヴラドの言葉。オマエらはいったい、なにを見て、なにを信じてきた。ざわめき立つ天界の両軍勢。やっぱりオレに、天界は似合わなかったみたいだ。そして、最後の言葉。だってここに、誰よりも天界を愛した、本当の王様がいるんだからな。

▲上へ戻る

聖戦:終章

そして、ヴラドが解放した竜の力。オレこそが、天界にとっての恐怖だってこと、教えてやるよ。手を振り払うたびに吹き飛ぶ大地。荒れる天候。そうさ、オレは魔王なんだ。あぁ、天界なんか滅ぼしてやるさ。オマエの家族を、そのすべてをな。

滅び行く天界を前に、オベロンの脳裏をよぎるのはかつての温かな思い出。止めろ、止めてくれ。あぁ、それでいいんだ。満足げな笑みを浮かべたヴラド。そう、オレは魔王で、オマエは妖精王なんだから。そしてオベロンは最後の一撃を放つのだった。

地へと堕ちた堕魔王。訪れたのは静寂。魔界の王でありながら、最後は天界を守る為に戦ったオベロン。では、いったいどちらの世界の勝利なのだろう。その静寂を終わらせたのはヴィヴィアンの一声。私達の王が帰ってきた。だから、私達の勝利です。

湧き上がる歓声。それは在りし日の恐怖の糾弾ではなかった。幕を閉じた最終決戦。勝者は堕精王オベロン。そう、天界を守る為に戦った、かつての妖精王だった。地へと降りたオベロンへと駆け寄るヴィヴィアン。そして、大粒の涙を溢したのだった。

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。何度も呟く後悔の言葉。ただ、ヴィヴィアンを見つめるオベロン。そして、オベロンはそんなヴィヴィアンを見て、すべてを理解したのだった。あぁ、牢獄の鍵を壊してくれたのは、君だったんだね、と。

ファティマはヴラドの元へ駆け寄り、そっと抱きかかえる。お帰りなさい、魔王様。一番に駆け寄ってくれるだなんて、やっぱりいい女になったじゃねぇか。作られたのは無理した笑顔。オマエのやり方は認めることは出来ない。だが、よく頑張ったな。

私はあの日から、ずっと間違えていたみたいです。これが本当のあなたの選択なんですね。ヴラドが選んだのは、王としての責務を全うすることではなく、たったひとりの友を救うことだった。だからオレは、王失格だ。失望してくれて構わないぜ。

その言葉をそのままお返しいたします。私は、なにもわかっていなかった。王の臣下失格です。こうして、ファティマが奏で続けた幻想は終わりを告げた。そう、あの日のファティマが想い描いた魔王など、初めから存在していなかったのだった。

オレはじきに朽ちるだろう。だから、あとのことは頼んだからな。だが、そんなヴラドの言葉は否定される。随分と、身勝手な魔王様ね。ふたりの元に訪れたユカリ。自分の言葉に、責任を持ちなさいよ。あなたは、魔王として、妖精王と戦ったのよね。

ヴラドへの肯定。そう簡単に死なせるわけにはいかない。あなたは魔王として戦い、そして敗北した。だから、その責任をとってもらわなきゃね。ユカリの掛け声を合図に、魔王の元に集まったのは傷だらけの十一人の将。だから、早く立ちなさい。

オベロンとヴィヴィアンの元に、駆け寄るひとりの少女。はじめまして、ですね。それはヒカリの言葉。私はきっと、望まれて生まれてきたわけじゃない。だけど、一言だけ言わせて欲しい。私にこの世界に生きる命を授けてくれて、ありがとう。

そして、お帰りなさい。ヒカリの後ろ、そこには十一人の将が。私達は、あなたを天界の王として再び迎え入れます。きっと、犯した罪は消えない。だけど、あなたならもう一度、立派な天界の王となり、この世界を愛してくれると信じています。

これで、良かったんだ。ヒスイはひとり、固く結ばれた王と王の右手と左手を、女王と女王の右手と左手を見つめていた。聖戦の終結。そして、新しく生まれた共に歩む道。その道の先には、未来へと進む神々の後姿が浮かび上がっていたのだった。

▲上へ戻る

聖戦を終えて

聖戦:その後・魔界

日常ってなんだろう。アカズキンは想いを馳せる。そう、私が欲しかったのは決して平穏なんかじゃなかったんだ。笑い合える友達がいる。大変なことがあるかもしれない、だけど、それでも大切な友達が側にいる。それが、私の欲しかった日常なんだ。

きっと、私はあのときに死んだんだ。ヒメヅルの言葉は、あのときのふたりの言葉を肯定する為に。だから、こうして友達になることが出来た。戦いが終わり、手を取り合ったふたり。そして、今度は絶対に負けない。いつかまた、戦えることを願って。

不思議なものね。アリスは紅茶を嗜んでいた。聖戦に負けたはずなのに、晴れ渡っていたアリスの心。それよりも、もっと不思議なこともあるの。ふたつの聖戦を経て、生まれたふたつの世界の絆。いまだけは、この不思議に酔いしれてもいいかしら。

私はただ愛を貫いただけよ。ムラサメの確固たる自信。そして、うちの女王も愛を貫いただけなの。女同士だからこそ、通じ合う心。だけど、いまはその愛を少しだけわけてあげるわ。その手は確かに、天界へと差し出されていたのだった。

すべての戦いが終わったとき、イバラは再び眠りについていた。それは戦いが始まる前と同じ光景。イバラにとって聖戦の前も後も、なにかが変わることはなかった。たったひとつ、イバラのみせる寝顔が、少しだけ幸せそうになっていたことを除いて。

聖戦は終わった。だが、ヤスツナはひとつ気がかりなことが残っていた。結局、ウィンディとの戦いは、どちらの勝利だったのか。そして、ヤスツナが考えに考えぬいて辿りついた一番格好いい答え。ふっ、ここは引き分けってことにしておいてやるぜ。

聖戦から一夜明け、目を覚ましたシンデレラ。そんな彼女の瞳に映し出されたのは、丁寧に塞がれていた傷口と、彼女のすぐ側で座りながら眠るカタリナの姿だった。そして、その姿を目にしたとき、シンデレラはすべての誤解に気がついたのだった。

僕は悔しい。それは、聖戦に敗れたからではなかった。僕は最後まで男になれなかった。かつての友とはいえ、戦場で相手を斬ることをためらってしまった自分を責めるライキリ。だから、僕は僕を殺します。そして、来るべき日を見つめるのだった。

聖戦が終わり、棺に込められた意味を知ったとき、カグヤは走り出していた。それじゃあ、もしかして。友が待っているかもしれない。そう、彼女は長い夢を、私は長い悪夢をみていただけ。新たに生まれた希望を信じ、そして友に会いに行くのだった。

怨みは愛に似ている。愛するが故に、怨みへと転化された感情。だから私は、すべてを受け止めた。とても、美味しかったわ。ごちそうさま。それにね、私が傷つけば傷ついたぶん、お姉さまが優しくしてくれるの。だから、私にとってはご褒美なのよ。

俺は言った。あいつは、俺と戦いたかっただけだと。だが、それは俺も同じだったんだな。ナキリがあのとき感じた喜び。なかなか、いい太刀筋だったぜ。ムミョウガタナの最後の一太刀は、ナキリの体に卒業の証の傷を残していたのだった。

こんなのってあんまりよ。コスモは不服を申し立てていた。なんで、この私が天界に出向かなきゃなんないのよ。天界と魔界の架け橋にと、それは天界の出であるコスモだからこそ選ばれた仕事だった。こうなったら、あいつらから富を巻き上げるわ。

ちゃんと挨拶しろって。デオンの背中を押したリイナ。背中を押されたデオンの前には聖魔王ヴラドが。知らないと思うが、コイツもかつてのオマエに憧れてたんだぜ。だったら、もっと憧れさせてやるよ。その言葉は、デオンの胸に深く響いていた。

リイナが放つ右の拳。それを黙って受けるヴラド。よっし、これでもう俺は気が済んだ。だから、お帰り。リイナはそっと、ヴラドの肩に手を置いた。俺たちは、あの日よりも強くなったんだ。だから、これからは遠慮なく頼ってくれていいんだからな。

幻想の果てに残った現実。だが、その現実をファティマは少しずつ受け止め始めていた。そして、そんなファティマの心をもう一度立ち上がらせたのは聖魔王の言葉。これは命令だ。もう一度、このオレについて来い。本当のオレの生き様を教えてやる。

私はただ過去をなぞったに過ぎない。だけど、こうして新しい道が生まれた。違う未来が広がり始めた。だから、もう少しだけ頑張ってみようと思う。どうか、最後まで見守っていてね。ユカリはひとり、お揃いのストールを抱きしめていたのだった。

聖戦の果てに生まれた新しい道。それは、天界と手を取り合い、肩を並べて歩く道。そして、オレたちの目的は、あのときも、いまも変わらない。だから、あのときの続きを始めよう。聖魔王ヴラドが睨んだのは神界。これからのオレたちなら、必ず―。

▲上へ戻る

聖戦:その後・天界

小さな火種が大きな争いへと発展することがあれば、小さな火種が争いを終結へと導くこともあった。そう、私は彼に救われたんだ。ヘレネは戦場に現れた小さな火種に感謝の想いを伝えた。だから、私は出来ることから始めよう。少しずつ、一歩ずつ。

サニィは気づいていた。私達は、試合に勝ったけど、勝負には負けたんだ。ううん、試合の勝ちすら、私達の力で成し遂げたものじゃなかった。だから、私達は変わらなきゃいけない。私達なら、変わっていけるよ。そう、生まれ変われたんだから。

命ある者が、いつか果てるのであれば、今を生きる者達は、なにをすべきだろうか。私達は生きて、そして次の世代へと、未来への道を作らなきゃいけない。過去が今と繋がり、そして未来が開かれる。オノノコマチは、そんな未来を夢見ていた。

私が敗北したのはきっと愛の力なんです。それはレイニィの知らない世界。だから、あなたもいっぱい恋をしなさい。オノノコマチの優しい言葉。誰かに出会い、誰かに恋をして、そして誰かの為に生きる。それが女にとっての最高の生き方なんですね。

ヨウキヒに届いたのは悲しいけれど、嬉しい知らせ。そっか、彼女は元気だったんだね。聖戦の裏側でディバインゲートの解放を阻止し、そしてそのまま姿を消したラプラス。大丈夫だよ、いつ帰ってきても大丈夫なように、これからも守り続けるから。

この勝負預けておくぜ、ベイベ。終わりを告げた風の戦い。ふたりの将の言葉を理解できるものはいない。だが、ふたりの実力は、その場の全員が認めていた。そして、その場の全員が思っていたこと。それは、ふたりとも残念な将だということだった。

私は最後まで見届けなきゃいけない。そして、シンデレラに肩を貸したカタリナ。それなら、一緒に見届けましょう。私があなたの体になります。聖戦の終結と共に瞳を閉ざしたシンデレラを天界の医務室へと運び、優しい愛を注ぎ続けたのだった。

これからまた、忙しくなるな。シャイニィはひとり、修復中の美宮殿を眺めていた。ったく、どこまで計算していたんだ。問いかけた先の答え。私達の王が帰ってきた。だけど、私は―。俯いたのはヴィヴィアンだった。嘘なら、最後までつき通せよ。

彼はまた姿を消したのね。クレオパトラの想いが産んだのは、ディバインゲート解放時間のわずかな遅れだった。だけど、いつか帰ってくるでしょう。だって、彼は少し頭が悪いの。だからね、いつか気づいてくれるって信じて待つことにするわ。

やっぱりね、私は彼を王であると認めることは出来ないみたい。聖戦の果て、再び入れ替わった王。不信感を抱くのはごく当たり前の感情だった。だけど、いまだけは従ってあげる。もし、王に相応しくないと思ったそのときは、私が殺してあげるから。

これから、どうなっていくんだろうね。聖戦の終結は新しい道の始まり。きっと、次に流れる血は今回の比じゃないはずだよ。だけど、付き合ってあげる。気になる話も残ってるしね。スノウィが気にしていたのは、王の血を引く同郷の存在だった。

みんな、ありがぴょん。再び散る聖暦の天才達。聖戦の裏側で行われた戦い。阻止することの出来たディバインゲートの解放。これでしばらくは安心だぴょん。そう、しばらくの間だけ。天才達は気づいていた。すべて、時間稼ぎにしかならないことを。

コガネは毛布を取り出すと、机に突っ伏したまま寝息を立てるカルネアデスの肩にそっとかけた。いまだけは、すべてを忘れて休んでください。来るべき日の為に、私ももっと頑張ります。だから、所長ひとりですべてを背負いすぎないでくださいね。

なにをしに来た。不動間を訪れたのはサニィ。お稽古をつけてもらおうかと思いまして。帰れ、ワシは寝る。しばらく食い下がるも、大人しく部屋を出て行ったサニィ。そして、ひとりになったイッテツは隠していた鉄アレイを探し始めたのだった。

どこへ行くつもりですか。天界を去ろうとしていたヴィヴィアンを引き止めたのはヒカリ。あなたのしたことを認めることは出来ません。だけど、私達の王を理解してあげられるのは、あなたしかいないんです。だから、王の側でその罪を償って下さい。

再び姿を消したモルガン、そして禁忌の血を選んだアーサー。私はまだ立ち止まることは出来ない。そして、確実に一歩ずつ歩き出したのは幸せな世界。きっと、これからもっと忙しくなる。だけど、私たちならきっと進めるはずだから。さぁ、行こう。

オベロンが握り締めていたのは、降伏文書だと偽られていた、最愛の人からの手紙だった。真実と後悔。そして、覚悟と希望。俺は、あの日選ぶことの出来なかった、もうひとつの道を選ぶよ。だから、共に行こう。これからの俺たちなら、必ず―。

▲上へ戻る