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Divine Gate -ディバインゲート- 攻略データベース

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ストーリーまとめ【グリモア教団】

完全なる落日/黄金の夜明け

グリモア教団に関するストーリー、および第2章「完全なる落日/黄金の夜明け」に関するストーリーをまとめました。

簡易年表

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  • 暗躍時代

    教団に育てられたカルネアデス、教団から去る

    • 妹のテンニは教団に残ったまま

    小国の富を独占、歯向かうユライを囚える

    偶像崇拝を作り出し小国を滅ぼす(アルタイル)

  • 表舞台

    四大魔王が揃う

    • 四大魔王を誰よりも大切に思う教祖クロウリー

    ラプラス、評議会を裏切り教団へ

    ラプラス、トラングルとトラピゾイドに自律の心を埋め込む

    オズの家族(トト、カカシ、レオン、ブリキ)を囚える

    サフェスの手によりシュレディンガーが教団へ

    南魔王パイモン、カナンにより消される

    オズの家族と引き換えに、助けに来たカナンを囚える

  • 交替準備

    教団に鞘が届けられる

    新南魔王アザエルが加わる

    • クロウリーは認めようとしない

    クロウリー、完全世界へ

    新東魔王サマエルが加わる

    • ティルソンからラプラスへ、受け入れるよう脅迫
  • 完全なる落日

    ミドリ、アオト、ライルが到着

    • ミドリ・オリナは東館(オリエンス戦)へ
    • アオトは西館(アリトンとの再会)へ
    • アスルは西館(シュレディンガー戦)へ
    • ライルは北館(アマイモン戦)へ

    西館にてロジンが敗れる

    北館にジョーイ乱入、ノアが助太刀

    アスル、地下祭壇での演説を目撃

    旧魔王3人が従者への道を選択

    メイザース、真教祖に就任

  • 黄金の夜明け

    それぞれの目的のため各所で交戦

    • ライル・オリナは地下宝物庫(聖なる鞘)へ
    • ノア(・アオト)は地下祭壇(真教祖撃破)へ
    • ミドリは地下牢(カナン奪還)へ

    響き渡る竜の咆哮

    • ノア、地下祭壇で炎を放つ
    • アオト・アリトン、シュレディンガーを撃破
    • ミドリは地下牢からカナンを奪還
    • 鞘は宝物庫から持ちだされた後
    • パイモン、宝物庫に幽閉されたクロウリーを保護

    グリモア教団本部、壊滅

    • クロウリーの元に集う4人の従者
    • 魔界へ送られたサフェスからの報告書
    • ライル、天界のヴィヴィアンのもとへ

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謎の教団の存在


見えていた片鱗

ユライ

交わってしまった世界、残された富を独占したのは権力者。自らこそが解放の導き手と名乗りを上げたユライは、力による支配へ反旗を翻した。全ては弱き者を、自分と同じ持たざる者達を理不尽な弾圧から守る為に。何も持たざる者が、唯一手にした短刀型ドライバ【タトラ】は、彼を義賊から英雄へと導けるだろうか。

義賊皇ユライ

権力者により統制された情報は悪意すらをも隠した。そして、無実の罪により囚われ、冷たく重い手錠をはめられたユライ。そんな不遇の塊を打ち砕いたのは、持たざる者達の願いが集められたドライバ【タトラ・ケッテ】だった。風を纏った刃で聖暦の闇を切り裂いた時、義賊皇として奉られ、新しい時代の風が吹いた。

「偶像崇拝」

ベガ

合言葉はギャラクタシー、銀河系アイドルというコンセプトで活動しているベガは踊ることが大好きだった。ただ、その想いは常界にのみ訪れる夏にだけ輝いていた。切ない秋、寒い冬を越え、暖かな春を迎え、そして訪れた晴天の真夏、今までの溜まりに溜まった想いを空へと打ち上げる。そう、ついに舞台は宇宙へと。

銀河嬢ベガ

銀河嬢ベガが送り出す楽曲は瞬く間にトリプルミリオンセールスを記録した。歌にダンス、そしてそのパフォーマンスを見た者はみな、口を揃えてギャラクタシーという歓声をあげた。街を歩けば耳に入り、そして目に入る楽曲。ただ、その楽曲やミュージックビデオに込められた恐ろしき願いに気付くものは少なかった。

アルタイル

銀河系アイドルを支える作曲家であり、銀河系プロデューサーでもあるアルタイル。ライブではマニュピレーターを担当し、人によっては二人一組のユニットであると捉えられることも多い。隠した素顔を知る者は相方である銀河系アイドル以外に存在せず、また大手レコード会社の社長でさえも見たことがないという。

銀河男アルタイル

銀河系プロデューサーがプロデュースしたかったのはアイドルではなく、偶像崇拝という行為そのものだった。歓声に囚われた心は自我を忘れさせた。そして訪れた暴動、加速するギャラクタシーは小国であれば崩壊へ導くのに十分だった。銀河男アルタイルは、また夏に会おう、とだけ言い残し、行方をくらませた。

「完全世界」を目指す組織

炎奏竜トロンボ

少し探って欲しい組織があるんだ。炎奏竜トロンボにそう伝えたのは古の竜王だった。彼女が向かった先は、聖なる扉とは異なった場所だった。黄昏の審判のその裏側で動いていた一つの組織。それは統合の先の融合世界でもなく、再創世界でもなく、完全世界という、非常に曖昧でいて完全な世界を目指した組織だった。

フルト

フルトは古の竜王により、一人の人間の監視を命じられていた。人間でいながらも、悪魔であろうとした一人の人間。彼は身も心も悪魔に捧げ、そして西魔王の地位を手にしていた。何故彼を監視する必要があるのか、それは完全世界という曖昧な言葉の意味を探る為。黄昏の審判の裏側、何かが動き出そうとしていた。

水奏竜フルト

水奏竜フルトが西魔王を監視するなかで知ったのはある教団の存在。東西南北に魔王を据え、完全世界を目指す組織。世界評議会の影に隠れ、目立たぬよう小国の権力者となり富を独占、歯向かう者へは無実の罪を。ある時は、アイドルという偶像崇拝による民の暴動を。そんな教団が表舞台へ立とうとしていたのだった。

スネア

古の竜王の命により、風を司る東魔王の素性を探っていたのはスネアだった。彼女が辿り着いたのは、世界評議会の影に隠れ、完全世界を目論む一つの教団。そして、彼女は一つの違和感に気がついた。教団員の集会日、そこには見覚えのある姿が。そう、評議会に属しているはずの、とある天才の姿があったのだった。

風奏竜スネア

教団の調査を続けていた風奏竜スネアはとある場面に遭遇した。それは集会後の時間。なんで君が、こんな場所にいるのかな。気づいたのは天才。集会に訪れるのを知っていたかのようなタイミングで現れた道化魔。悪いけど、知られたからには消えてもらうよ。いつもとまるで雰囲気の違う天才の姿がそこにはあった。

光奏竜トランペ

竜界<ドラグティア>を飛び出した光奏竜トランペが向かった先は神界<ラグナティア>ではなく常界<テラスティア>だった。調査対象は完全世界を目指す一つの教団。その完全世界という不確かな言葉の意味を追いかけていた矢先、彼女の耳に届けられたのは、先輩にあたる文明竜達の予期せぬ全滅の知らせだった。

グロック

グロックが北魔王へ辿り着くのに、さほど時間は要さなかった。常界に生きる人間の価値観とは異なった言動、その全ては幸せに通じると悪魔は言う。そう魔王は言う。完全な世界とは、何だろうか。誰一人として、悲しむことのない、そんな世界なのだろうか。それとも、全ての人が幸せな、そんな世界なのだろうか。

無奏竜グロック

完全世界を目指す教団は黄昏の審判で混乱した世界の裏側で着実に準備を進めていた。そう、教団が利用しようとしたのは、目障りな世界評議会に属する一人の男。無奏竜グロックが目撃したのは自力で動くことの出来ない装飾の施された自立型ドライバに拘束された青い犬、翼の折れた光の獅子と枯れた緑の悪魔だった。

西魔王アリトン

水の刃が切り裂いたのは、水を留めし少年をずっと見守って来た精霊だった。止めどなく溢れる水。もう、私がいなくても大丈夫だよね。最後の力を振り絞ってまで守りたかった少年は、水へと還る精霊を、一人の女性として抱きしめた。兄さん、僕たちは行くんだ、完全世界へ。西魔王アリトンは傷跡だけを残し消えた。

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姿を表したグリモア教団

勢力を拡大する教団

トラングル

グリモア教団に属し、波形を操る六波羅と呼ばれる人物の一人、トラングル。その正体は第四世代でありながら自律の心を持った第四世代自律兵器型ドライバだった。生まれた時から自律の心を持っていたのか、それとも後で植えつけられたのか、その答えを知るのは一人の天才であり、天才にしか成しえない所業だった。

炎波機トラングル

グリモア教団には六波羅と呼ばれる六人の団員が存在していた。それを六人と呼ぶのが正しいかは定かではないが、便宜上、そう呼ばれていた。教団のシンボルとされた目は皆で完全世界を目指すという意味が込められており、炎波機トラングルも例外ではない。自律の心には、完全世界はどう捉われているのだろうか。

サフェス

人と竜の次種族<セカンド>が存在するのであれば、悪魔と神の次種族<セカンド>も存在する。それは誰しもが考えられることであり、誰しもが考えたくないことであった。人が神に近づく、人が神の力を手にするというのは一体どういうことを意味するのか、それは六波羅であるサフェスの行動にあったのだった。

水波神サフェス

久しぶりだね。向き合った二人の男。一人は布で口元を隠し、一人はドライバで口元を隠していた。君は神に裏切られ、そして捨てられたんだよ。舞台は絶海の孤島。君が追いかけた初恋の続きをしようか、君の居場所はそこじゃない。続く言葉。さぁ、共に完全世界を目指そう。水波神サフェスは水才へと手を伸ばした。

トラピゾイド

なかなか悪くない出来ね。第四世代自立兵器型ドライバであるトラピゾイドに自律の心を、エレメンツハートを取り付けた天才は満足げな笑みを浮かべていた。笑ったその目は幸せそうに見え、また、悲しそうにも見えるのだった。そして浮遊する自律兵器を見て、天才は呟いた。あなたは、翼がなくても飛べるのね、と。

風波機トラピゾイド

自律の心は考える。何故自分に心が与えられたのか。自律の心は悩む。何故自分に心が与えられたのか。自律の心は苦しむ。何故自分に心が与えられたのか。自律の心はやがて、考えることも、悩むことも、苦しむことも止めた。風波機トラピゾイドは自律の心に疑問を感じず、さも当たり前かの様に、風を集めていた。

サイン

悪魔と神の次種族<セカンド>であるサインは、ひとりぼんやり空を眺めていた。この空の向こうにあるのは、幸せな世界でしょうか、それとも悲しい世界でしょうか。それは子供の頃からよく聞かされていた言葉だった。私はいつまで、神のフリを続ければいいのでしょうか。それは、次種族<セカンド>の運命だった。

光波神サイン

ぴょんぴょん、揺れるツインテール。お久しぶりです。光波神サインの目の前に現われたのは、幼い頃、一緒に遊んでくれた一人の悪魔だった。キミは辛くないのかぴょん。そう彼女は問いかける。もう、辛いという感情がわからなくなりました。その言葉に光の悪魔は答えをくれた。だったら、背けばいいんだぴょん。

サトス

次種族<セカンド>になることを望んだのか、それとも望まれたのか、人でありながら獣になることを望んだのか、それとも望まれたのか。目を覚ました時の彼女の満面の笑みをみれば、それはどちらも前者であることは一目瞭然だった。力を得たサトスが見つめた一枚の写真、そこには自分と同じ笑顔の闇の獣の姿が。

闇波獣サトス

やっと同じ力を得ることが出来たわ。グリモア教団の力を借り、そして六波羅と呼ばれるまでに力をつけた闇波獣サトスは自由を手にした。やっとあなたに会えるわ。幾人からの話を頼りに向かった先は天界<セレスティア>の深い闇の洞窟。出迎えたのは解放された闇の妖精王、その隣、写真の獣は首輪を繋がれていた。

スクェア

与えられた名前、引き換えに失った過去。場所はグリモア教団生態科学支部。沢山の視線を感じながら覚えた絶頂。おめでとう、次種族<セカンド>への改造実験は成功したよ。スクェアは目を覚ました。いや、正確には目を覚まされた。そして開かれたばかりの狂気に満ちた目、直後、辺りには血の海が広がっていた。

無波獣スクェア

無波獣スクェアが訪れたのは破要塞<カタストロフ>だった。封鎖されたはずの要塞に灯った光。鍵のかかったドアをこじ開けた先、一体の自律兵器と天才が。それ、修理されちゃあ困るんだよね。力を解放しようとする獣。あなたの傷は、力に変わるから。そう、第五世代最狂の自律兵器が再び目を覚まそうとしていた。

教団が拘る「過去」と「未来」

ショクミョウ

グリモア教団の本部に設立された超常神通室に所属する六人の団員、彼らは通称サイキックスと呼ばれ、人知を超越した能力を身につけていた。ショクミョウと呼ばれる男が手にした能力は、自らの過去世を、そう、前世を知る能力だった。その力が、何を意味していたのか、それは深く考えずともわかることだった。

炎通者ショクミョウ

炎通者ショクミョウが手にした能力が意味していたこと、それは前世が存在する、ということだった。彼は前世からこの能力を持っていたのか、それとも後天的に手に入れたのか、それを知ることが出来た。そして、前世が存在するということは、輪廻転生の証明でもあり、また、彼自身が、その証明ともなるのだった。

ロジン

少女は家を飛び出し、雨に打たれていた。ある日目覚めた不思議な力、それは自分の輪廻転生の最後を知る能力だった。もう、生まれ変わることはないんだね。その能力が本物だと信じたのは、その能力が本物だったから。こんな力、欲しくないよ。ならば、僕にくれないかな。彼女に手を差し伸べたのは西魔王だった。

水通者ロジン

西魔王に導かれ、そして訪れたグリモア教団の超常神通室。なんで、私なんかを。その答えは簡単だった。輪廻転生の証明に必要なのは二つ。前世の存在の証明と来世の存在の証明。君が失くした来世、それこそが来世の存在証明なんだよ。西魔王は水通者ロジンをお姫様の如く扱うのだった。共に、最高の現世を過そう。

ジンソク

えーと、次は、刻の狭間、って。ジンソクは配達先を確認して肩を落としていた。あの神、よっぽど通販好きなんだな。そんな彼が持っていた能力は自由自在に移動する力。それはまるで神の様な能力。その能力目当てにグリモア教団は彼を招き入れ、そして彼は籍を置く代わりに衣食住を保障してもらっていたのだった。

風通者ジンソク

グリモア教団に籍を置き、そして超常神通室所属の風通者ジンソクになろうとも、彼のスタンスは変わっていなかった。配達の仕事って、意外と面白いんだよね。そう、彼は時を廻る配達人。そんな仕事であり遊びである配達を楽しむ為にも衣食住の保障が必要だったのだ。完全世界とか知らん。それが彼の口癖だった。

テンニ

ねーねは、ここからいなくなっちゃうの。少女の疑問、それは遥か遠くの話声が聞こえたから。身寄りのない姉妹は教団で育ち、そして完全世界を目指していた。そして、後にテンニと呼ばれる少女が聞いた通り、姉は教団を去っていった。なぜ遠くの声が聞こえたのか、それは少女が能力を手にしていたからだった。

光通者テンニ

誰かの幸せは誰かの悲しみであり、誰かの悲しみは誰かの幸せである。少女の姉は常にその疑問に取り憑かれ、そして教団を抜け出した。幸せは悲しみであり、悲しみは幸せである。その事実に気付いたからこそ、神との次種族<セカンド>の道を進む光通者テンニに聞こえるように叫んだ。お姉ちゃんは、おこだぴょん。

テンゲン

君に視てもらいたい人がいるよ。東魔王の勅令を受けたテンゲンはとある人物を探していた。何となくだけど、完全世界の不安因子になる気がする。その言葉を思い出しながら辿り着いたのは、絶対王政を謳い、後に聖王と名乗る一人の男だった。覗き視た過去世、繋がる不安、なぜなら、何も視えなかったからだった。

闇通者テンゲン

闇通者テンゲンの役割には二つの意味があった。一つは輪廻転生の証明、そしてもう一つは例外の証明。幾億万と繰り返されてきた世界に輪廻転生が存在するのであれば、前世を、過去世を持たない存在が何を意味するのか、それが始まりを意味している事に気付いた時、その存在が存在している恐怖に気付くのだった。

タシン

教団が所有する千年書庫の司書を兼任するタシンが持つ能力は他人の心を知る能力だった。他人が何を考え、何を求め、何の行動をするのか、その全てが手に取るようにわかるのだ。それ故、その能力を知る者はごく一部に限られており、また教団の特秘事項に定められていたのだった。教祖は何時も、真っ直ぐですわね。

無通者タシン

不安因子を、完全に取り除きたいんだ。無通者タシンには特殊任務が下され、赴いた先には二人の青年の姿が。運命に抗おうと毒を捨てた青年の心は読まれた。死を恐れてはダメよ。そして言葉は続く。なぜ、なぜあなたの心は。目的だったはずの人物の心は読めなかった。いや、心が存在していなかったのかもしれない。

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砂の上の教祖

道化竜と永久竜

パイモン

パイモンがその場所に訪れた時、既に戦いは終わっていた。ハートの髪飾りは歪み、赤い薔薇は散り、ロングコートは凍りつき、シルクハットは焼け焦げていた。古の竜の血など所詮は敗者の、下等な血ね。吐き捨てた言葉。夢より素敵な魔法だなんて、聞いてあきれるわ。そこには、地面にうずくまった道化竜がいた。

南魔王パイモン

南魔王パイモンが作りし陽炎、そこに映し出されたのは捕われた家族達だった。これは夢です。現実だ。夢を見ているんです。現実だ。なぜ、いつも世界は僕達を。世界など、始めから誰の味方でもなければ、裏切りなど存在しない。そして、更に映し出された一人の少女。直後、グリモア教団から南魔王の存在が消えた。

カナン

僕は約束をしたんです、家族だけは、守り抜くって。それは、魔法が使えなくなった魔法使いの涙。ならば、その約束を果たさずに死んでどうする。瀕死の道化竜を救ったのは、一族の王の孫娘だった。王から、僕を殺す役目を遣わされたのですか。その問いに、カナンは首をかしげた。なぜ、貴様を殺す必要があるのだ。

永久竜カナン

永久竜カナンは落ち着いた口調で語り始めた。それは世界の交わりを創り直すもう一つの方法。そして、その再創による犠牲の存在。王に会ったら伝えて下さい。生かしてくれて、ありがとう、と。そして、出来損ないで、ごめんなさい、と。傷だらけの道化竜は立ち上がり、一人、汚れた足で聖なる出口へと歩き始めた。

道化の家族と引き換えに

オリエンス

何でみな争うのかしら。オリエンスは疑問を抱いていた。魔界も天界も、仲良くすれば良いのに。妖精である彼女は優しさや厳しさの風に吹かれ育った。四人の風の妖精達はいつも一緒だった。ねぇ、あなたはどう思うの。語りかけたのは共に育った一人の天才。よく言うわね。視線の先、そこに囚われのある家族がいた。

東魔王オリエンス

そいつらを返してもらう。教団本部、単身で乗り込んだのは永久竜。満面の笑みを浮かべる東魔王オリエンス。コイツらにもう用はないの。乱暴に解放される四体。喋れないコイツらは、永遠にあの日のお父さんを待つのね、けひひ。怒りを隠せない永久竜、一触即発の状況を制止したのは世界評議会を抜けた風才だった。

アマイモン

来客だ。教祖は告げる。どうすんの。アマイモンは問う。殺さずに、連れて来い。彼はその意味が理解出来なかった。冗談は止めろ。多銃砲型ドライバ【ベルセルク】に詰める弾。ここは僕が。水通者と共に現れた西魔王。女連れがしゃしゃんなよ。向けた敵意。君には、特別な任務を与えよう。教祖は言葉と共に消えた。

北魔王アマイモン

道化竜の家族は解放された。だが、その裏には北魔王アマイモンが存在していた。手を上げてもらおうか。永久竜の背後、突きつけられた多銃砲型ドライバ【ベルセルク:ゴア】と、更にその背後に潜む無数の教団員。けひひ。笑顔を浮かべる東魔王。そいつらと、交換といこう。鳴り響く無数の銃砲。レッツ、ハッピー。

砂上の楼閣で苦しむ教祖

クロウリー

クロウリーは言った。世界は完全であるべきだと。完全という言葉が何を意味しているのか、それは団員でさえも確証を得てはいなかった。ただ、その真っ直ぐな瞳が見つめる未来を見たい、見てみたい、そんな想いが集まっていたのだった。神に救いを求めよ。だが、そんな言葉を発した少女は、紛れも無く人間だった。

教祖クロウリー

創られた神格は彼女を苦しめ続けていた。でもそれが、私という人格なのだから。教祖クロウリーが右を向けば右を向く。あぁ、なんて健気なんだろうか。そして込めた皮肉。完全世界など、夢のまた夢。終わらせるのも、また私の役目か。砂上の楼閣に気付かない、愚か者達め。彼女の苦しみに、気付く者はいなかった。

とある休日Ⅱ

着替えごとき、一人で出来るといつも言っているだろう。朝から紅茶などいらん、水で十分だ。それは教祖にとっての当たり前の朝。だがそれを受け入れることは出来なかった。鳥籠の中の教祖は目を開けて夢を見る。砂上の楼閣がいつか崩れ去る夢を。

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教祖の裏に見え隠れする男

元の種族が失われる<セカンド>

フェルノ

捨てられた少女は食べ物が欲しかった。胃を満たせるものなら、何でも良かった。そうだ、キミに永遠の甘い飴を約束しよう。でもね、その代わりに、その命を預けてくれないか。そうして、名前もなかった少女はフェルノとして育てられた。そして、自分が徐々に人ではなくなっていく感覚さえ、愛おしかったのだった。

偽炎竜フェルノ

偽りは炎か竜か。あぁ、私はいつ生まれたのか。徐々に失われる記憶。そして、徐々に失われる人としての肉体。そう、肉体ですらも人間であることを忘れ、竜に成り代わろうとしていた。上出来じゃないか。そんな偽炎竜に拍手を送る男。ようこそ、完全世界へ。そこにいたのは、砂上の楼閣に苦しむ教祖ではなかった。

シュトロム

もう一度、やり直したいと思わないかい。それは命以外の全てを失った青年へ囁かれた言葉。キミが望むもの全てをあげよう。その代わり、残されたその命を、預けてもらうよ。藁をも掴む想いで選んだのはシュトロムとしてもう一度生きる道。良いんだよ。それで良いんだよ。そう、全ての敵をね、思う存分憎むんだよ。

偽水竜シュトロム

ようこそ、いらっしゃいました。教団本部からほど近い屋敷。おい、こんな結末、聞いてないぞ。偽水竜シュトロムは人であったことを忘れようとしていた。キミに結末を選ぶ権利はないんですよ。吐き捨てた言葉。あの子も良く働いてくれました。そう、偶像として、最高の仕事をしてくれました。そろそろ、時間です。

クロン

友達なんていらないよ。少女は変わりたくて夜の街へと逃げ込んだ。この喧騒とネオンは私に優しいのね。そこでは一人じゃなかった。そうよ、私は夜の蝶になるの。だったら、思う存分、甘い蜜を吸わせてあげようじゃないか。甘い誘いを求めた少女の存在は世界から消え、そしてクロンという少女が生まれたのだった。

偽風精クロン

愛想笑いが心地良いわ。ほら、みんなもっと笑って、笑って。ここに理性は必要ないわ。甘い、甘い、そんな蜜を、いつまでも吸い続けることが出来るのだから。私は、蝶になったの。それは偽風精クロンの望んでいた結果だった。ありがとう、私のことを変えてくれて。礼には及ばないよ。これが、正しい道なんだから。

トニング

僕のことを捕まえてごらんよ。僕はみんなのモノだから。一番最初に捕まえた人のお願いを、何でも聞いてあげるよ。だから、ほら、早く僕を捕まえてよ。そんな平和な昼下がりを壊したのは一人の男だった。捕まえた。そう、彼を捕まえたのは想定外の男だった。言うこと、何でも聞くよ。そしてトニングは生まれた。

偽光精トニング

今の暮らしも、悪くはないね。偽光精トニングは、新しいもう一つの自我に飲み込まれないでいた。でもね、不思議なんだ。気がついたら羽が生えていた。やっぱり僕は妖精さんだったのかな。喜びの微笑み。あぁ、君は妖精だよ。そしてね、もう少しで完全な妖精になれるんだ。あはは、やった、やっと忘れられるよ。

クホール

君は悪くないよ。見つめる空。何も悪くない。見つめる地面。悪いのはいつも世界だよ。遠ざかる空。だからね、こっちへおいでよ。近づく地面。次の瞬間、彼女の体には別の力が宿ったのだった。うん、お利口さん。生まれたのはクホールという人間。そして、今までの彼女は死んだ。君はね、生まれ変われたんだよ。

偽闇魔クホール

アタシはね、もう今までのアタシじゃないの。見つめる空。落ちる速度を、教えてあげるわ。見つめる地面。悪いのはアンタよ。遠ざかる空。最高のさようならをあげる。近づく地面。もう、あんまり悪さをしたら駄目じゃないか。偽闇魔クホールはただただ笑っていた。復讐よ。そう、復讐なのよ。ただの、復讐なの。

教団へと届いた「とある鞘」

堕風才ラプラス

あなたは取引材料だから。はだけた衣服、繋がれた手錠、それでも堕風才を睨み付けたのは永久竜。光届かない教団の地下牢、評議会を抜け、教団に身をおいたラプラスは少し退屈そうにしていた。哀れね、あんな裏切りの道化竜の為にここまでするなんて。鋭さを増した睨む眼光。もうすぐね、世界に完全が訪れるのよ。

イヴァン

久しぶりね。囚われた永久竜の元に顔を出したのはイヴァンだった。いくら信じてもね、王と、その道化に活路は見出せないわ。統合世界に加わり、神界との均衡が崩れた竜界と、その地に生きる者はみな、上位なる存在ではなくなっていた。王の証を失くした竜王じゃ、きっとこの世界を変えることは出来ないわ。

雷帝竜イヴァン

そろそろ時間が来たようね。雷帝竜イヴァンを呼びに来た教団員が伝えたのは、とある鞘が届けられたという知らせ。教祖は象徴でしかなく、それはとても脆い存在よ。そう、王も所詮、象徴でしかないの。込められた皮肉。だが、永久竜が動じることはなかった。私は信じている、彼が持つ、もう一つの意味と可能性を。

地下牢バスティユ

邂逅を果たした竜と竜。同じ世界で生まれた二人を遮ったのは鉄格子。どちらが外でどちらが内か、それは状況を見れば一目瞭然。だが、果たしてそれは真実だろうか。見方を変えれば、世界は変わる。二人を遮ったのは、固定観念でしかなかった。

「鞘」を奪還するために

アスル=ブルーノ

オレもアンタと一緒で、目を覚まさせたい人がいるんだ。アスルが告げた聖王代理の計画。聖戦を止める鍵となる聖王奪還へと向かった炎咎甲士と円卓の仲間。そして水を留めた少年は双子の弟との決着を、新しい隊服に袖を通した少年は帰らない王の為の鞘を、二人はそれぞれの思いで、教団本部へと向かったのだった。

オリナ=ラモラック

再会を喜ぶ二人、だが時間は待ってはくれない。なんで私を。ゆっくり説明をしている暇はなさそうなの。オリナは風咎棍士の手を引く。臨戦態勢の天界と魔界、頂上に君臨した二人の友達。その裏で暗躍する二人の女と二人の男。そして行方知らずの悪戯神に動き始めた教団。二人が向かった先は、教団本部だった。

ミレン=トリスタン

聖王代理を務めるミレンは、一部の隊員を鞘の奪還へ、一部の隊員を帰らぬ王の奪還へと向かわせた。仕事後の執務室、指でなぞったのは溶け出した氷。全員で、迎えたいのに。こぼした溜息。もし、あの子の言葉が本当ならば。彼女が気にしていたのは、隊服を脱ぎ捨てた一人の女の言葉だった。世界は、彼を許さない。

全ては、あの方の為に

アザエル

南魔王はもういない。その事実は、教団員達に伏せられていた。奴の仕事、絶対嫌だかんな。そう言い放つ北魔王。私、自信ないよぉ。続く東魔王。僕は僕のやるべきことが。最後に西魔王。教祖は肩を落としながら自室へ。だがその矢先、教祖の元を訪ねる二人が。彼女が、新しい南魔王だよ。そこにはアザエルがいた。

南魔王アザエル

お初にお目に掛かります。だが、教祖はアザエルを認めはしなかった。私にとって、南魔王は奴だけだ。今も昔も、これからも。高ぶる感情。それでいいんだよ、君にとっての、南魔王は。崩れたのは砂上の楼閣ではなかった。そしてその日、教団全体にとある通達が。教祖は誰よりも先に、完全世界へと旅立たれました。

ティルソン

私はいつまでも、傍にいますよ。そう囁きながら注いだ紅茶。僕が君を、助けてあげよう。そう囁きながら撒いた飴。オレに指図するな、キミは消えろ。そう囁きながら弾いた障害。本当に幸せです、教祖様が一人で先に旅立たれてしまうなんて。ティルソンは続ける。ここからは、完全世界の翻訳をしてもらいましょう。

執事竜ティルソン

完全世界の為に、教団員の心を一つにします。執事竜ティルソンは続ける。人は、悲劇に心を動かされる生き物です。上がった口角、下りた睫。ですから、彼らには、華麗に散ってもらいましょう。見つめたのは四大魔王の椅子。そして、悲しみの夜が訪れた後には、黄金の夜明けが訪れるのです。全ては、あの方の為に。

サマエル

なぜ、そんなに悲しい瞳をしているんだい。教団本部の研究室、堕風才に問いかけたのは執事竜だった。君らしくないじゃない。だが、一向に返事はなかった。黙っていたって、わからないよ。そして、ようやく返ってきた返答。私にその女を受け入れろと言いたいのね。黙って頷くそのすぐ横に、サマエルは立っていた。

東魔王サマエル

これはね、僕と君との秘密の約束だよ。だが、頷かない堕風才。だったら、君の居場所はないよ。それは約束ではなく、一方的な脅迫。東魔王サマエル、彼女こそ四大魔王に相応しい。悲しい瞳は、深みを増した。翼をもがれ、手足まで縛られる気分はどうだい。それでも、堕風才は悲しい笑顔を浮かべていた。けひひ。

近づく再会と案内人マリナ

堕水才シュレディンガー

もうすぐだよ、もうすぐ彼がここに来る。そう語りかけたのは水波神。堕水才シュレディンガーは、蒼き兄弟が再会する、その時を心待ちにしていた。あの日に溺れた初恋、彷徨い続ける狂気の海、二つに割れた恋が一つに重なり合う時、沈む先は空か海か。そして、溺れ続けた初恋に、最後の答えを出そうとしていた。

遊水洞トリトーン

立入禁止区域を抜けた先に、遊水洞は存在していた。涼しげな風、穏やかな日差し、生い茂る緑、そこはまるで、秘密基地のようだった。ここを、2人だけの内緒の場所にしよう。そんな約束をしたのは、金髪碧眼の幼き兄弟。水は2人を祝福していた。

流水獣マリナ

あなた様は気付いていたんでしょう。ご両親の歪んだ愛情に。出来の悪い兄と、出来の良い弟。虐待される兄と、優遇される弟。だから弟様は。ただ、気付いていないことが、一つだけ残っているんです。続く一人言を遮る一言。君は誰だ。わたくしは、水先案内人です。誰の差し金だ。それはまだ、言わない約束です。

水精王の予感

再会は、もうすぐだね。水精王は語りかける。弟君に会ったら、どうするつもりなのかな。水咎刀士は口を開く。あの日の真実と、向き合うまでだよ。それは、彼らの両親が命を落とした真実。だから、行こう。教団本部は目前まで迫っていたのだった。

屠殺竜にそそのかされて

極楽竜ジョーイ

世界評議会の施設である訓練場から、一匹の竜が姿を消した。鳴り響くサイレン、下りたシャッター、だが、極楽竜ジョーイを止められる者はいなかった。あはは、あはははは。夜の街に響き渡る楽しげな笑い声。あはは、あはははは。加速する竜の血は止められない。竜なんかよりも、よっぽど楽しい人間がいたじゃん。

極楽の竜

なぜ、あのとき彼らは攻撃をしなかったのか。その答えは簡単だった。どうせ、世界は変わらない。だが、そんな世界に疑問を持つ一人の竜は考えた。だったら、楽しんだもの勝ちじゃん。だから彼は一人、動き出した。もっと、楽しませてくれるよね。

極楽竜が引きずり出したのは、首筋に埋め込まれた生体管理チップだった。だって、見つかったらやっかいだもん。あの時、あの場所、一人の人間は竜に立ち向かっていた。僕はね、あの光景を忘れることが出来ないんだ。だから、今度は僕も混ぜてよ。

あそこに行けば、もう一度彼に出会うことが出来るよ。そう、それは悪魔の囁きだった。だから極楽竜は施設を抜け出した。これで、まずは一匹の竜が消えてくれたね。悪魔の囁き、それは人であり、竜である男の囁き。すべては、屠竜者の描く未来へ。

どんなことして、楽しもうかな。極楽竜の頭の中は、彼への興味でいっぱいだった。殴り合いがいいかな、駆けっことかどうだろう、少しならお話してもいいかもね。だが、最後の行き着く答えは一つだった。でも、やっぱり、殺し合いが一番だよね。

知ってるよ、この匂い、知ってるよ。極楽竜は興奮していた。あの時のだよ、血が染みた、あの時の匂いだよ。極楽竜は興奮を抑えられなかった。さぁ、早く、もっと、早く。始めようよ、僕達の楽しいことを。極楽竜は興奮を解き放とうとしていた。

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完全なる落日

本部へ集結

完全なる落日:序章

ミドリとオリナが辿り着いたのは教団本部だった。そこは本館を中心に、東西南北の五つの館に別れていた。もぉ、どこから入ればいいのー。そんなミドリの迷いを振りほどいたのは、かつての仲間との再会だった。西館は、僕達に任せてくれないかな。

完全なる落日:序章

友を東館へと見送り、アオト達は北館の前を通り過ぎようとしていた。西館にお連れしないと、怒られちゃいますからねっ。そうおどけてみせたのは流水獣。だが、そんなアオト達の後ろ、大剣を携えた影が忍び寄る。どうして、オマエらがいるんだよ。

完全なる落日:序章

久しぶりだな、クソチビ。その言葉とは裏腹に、嬉しそうな表情を浮かべるライル。うっせーよ、チャラ男。怒りながらも笑ってみせたアスル。そんな二人を、優しい瞳で見つめるアオト。三人はそれぞれの想いを胸に、教団本部へと突入するのだった。

執事竜の演説

完全なる落日:序章

彼らが来たみたいですよ。紅茶を注ぐ執事竜。見物をさせてもらおうよ。紅茶を舐める少年。それでは、始めましょうか、完全なる落日を。すべては、黄金の夜明けの為に。グリモア教団本部の本館の地下祭壇には、一部の教団員だけが集められていた。

始まった演説。我らが教祖様は、完全世界へと旅立たれました。私達は、至っていなかったのです。教祖様のみが、完全だったのです。ですが、そんな教祖様に残されようとも、想い続ける三人の魔王達や、教団員達がいるではないですか。演説は続く。

続く演説。モニターに映し出された三人の魔王。私は彼らに賞賛を送りたい。残された彼らもまた、完全だったのだと。みなさん、どうかその目にしっかりと焼き付けて下さい。彼らの散り行く姿を。彼らは最期まで、完全なのです。演説は終わらない。

続く演説。そして、ここに、旅立たれた教祖様の残した一通の推薦状があります。教祖様の意志を継ぐ、真教祖様の名が記されているのです。全ては落日の後に。さぁ、みなさん、その目に、完全を焼き付けるのです。そして、日は沈み始めるのだった。

"東魔王オリエンス"の最期

完全なる落日:ミドリ

東館に突入したミドリとオリナの前に立ち塞がった二体の第四世代自律兵器型ドライバ。きっと、あの子のアル。だったら、壊しちゃっていいよね。構える三本の棍。そして、対峙した少女達を、堕風才は別室のモニターから静かに眺めていたのだった。

アタシだってね、あの頃より強くなったんだよ。左手の棍で風波機を弾き、右手の棍で炎波機を防いだオリナ。だから先に進んで。だが、戸惑うミドリ。なんだか、嫌な予感がするの。解かれていた教団の警備と不穏な空気。大丈夫、すぐ追いつくから。

オリナを残し、先へ進むミドリは嫌な風を感じていた。どうしてここの風は、悲しいんだろう。直後、目の前に現れた笑顔。一緒にいるんだよね、私にはわかるよ。その言葉が向けられたのはミドリではなく、風精王だった。そして笑顔は歪む。けひひ。

また奪うんだね、私達の居場所を。再開を果した東魔王と風精王。師匠が話してくれた、友達だね。歪な平和の犠牲者は襲い掛かる。どうしてアル。私達はもう、ここしかないの。だが、東魔王は知っていた。もう、ここにも、居場所がなかったことを。

知ってるよ、完全世界なんて存在しないって。ぶつかり合う風と風。だけど、私はあの子を信じた。あの子の目は真っ直ぐだった。私は、完全が欲しかった。そう言ってもらえるだけで嬉しかった。溢れる本心。心安らげる居場所を求めて、何が悪いの。

完全なる落日:終章

居場所を求めることを、否定しない。語り掛けるミドリ。あの子も、そうだった。巻き起こした風に乗せる想い。だけど、居場所はきっと、この場所じゃない。近づく決着。なら、どこだっていうのよ。棍が打ち砕いた心。場所じゃなくて、人なんだよ。

東従者オリエンス

やっぱり、完全世界なんてなかったのよ。そして、オリエンスは左目を抉った。これで、お別れね。それは教団との決別を意味していた。私は不完全な存在になったの。だが、東従者となった彼女の残された右目には光が宿っていた。私の居場所なら、初めからあったのね。残された右目で見つめた一人の少女。けひひ。

"北魔王アマイモン"の最期

完全なる落日:ライル

北館に突入したライルを待ち伏せていた無数の教団員。さぁ、派手にいこうぜ。大剣を手にした青年は、一人、五人、十人と切り捨てていく。面倒くせぇ、いっぺんに掛かって来い。そんな叫び声に呼応するかの様に姿を見せたのは、四人の男女だった。

悪いけど、俺は光ってるヤツが大嫌いなんだ。ライルの大剣が薙ぎ払う光通者と光波神。俺達にも守りたい場所がある。そんなライルに立ち向かう炎通者と闇通者。だったら、守ってみせろって。決着は、一瞬にして着いた。甘ったれたこと言ってんな。

本館には行かせねぇよ。無数の銃声が鳴り響く。犬っころはお手でもしてろ。だが、差し出した左手には既に力が入っていなかった。勝てる戦いには興味ねぇが、これも俺の役目だ。振られ続ける尻尾は、興奮の表れ。始めようか、レッツ、ハッピー。

気付いてんだろ。ライルは問いかける。あぁ、全部な。北魔王の口から語られる、教団の今。だから俺は、守るんだよ、あいつが帰って来られるように。だったら、迎えに行けっての。そして、そんな戦いを一匹の竜が引き裂いた。ねぇ、僕も混ぜてよ。

こんなの、聞いてねーよ。あはは。左足に突き刺さる極楽竜の槍。勝ちだ。右足を打ち抜いた北魔王の弾丸。オレ、格好悪ぃ。崩れ落ちるライル。だが、そんな傷だらけの体を支えたのは火竜を連れた竜だった。人間にしては、なかなかやるみたいだな。

古竜王ノア

もう一度戦うには、こうする以外に方法はなかったんです。自らの意思で体を捨てた道化竜は、在りし日の姿で古竜王ノアに寄り添っていた。温かいな、まるであの頃が帰ってきたようだ。それは二人だけがわかる、二人だけの思い出。頭に乗せたのは、少し変わった王の証。さぁ、いこう、お前こそが、私のクラウンだ。

完全なる落日:終章

退避した極楽竜と、逃げることのない北魔王。その覚悟に、恥じぬ最後をくれてやろう。燃え盛る炎。これが、オマエの覚悟なんだな。ライルの問いに、ニヤリと返した炎。そして、力なき聖剣が切り裂く北魔王の信念。尻尾振る相手を、間違えんな。

北従者アマイモン

あの日、アイツは俺を拾ってくれた。蘇る思い出、いつかの路地裏。いつの間にか、忘れちまってたみたいだ。そしてアマイモンは首輪に手を伸ばした。今も昔も、これからも、俺は飼い犬でいい。剥奪された北魔王の地位、だが、嘆きはしなかった。そう、飼い主だけは、俺が決めるんだ。選んだのは北従者の道だった。

"西魔王アリトン"の最期

完全なる落日:アオト

ライルと別れ、向った西館。入口で待っていたのは、ただ一人の教団員だった。連れて来ましたわ。流水獣が駆け寄ったのは優しい笑顔の水通者。安心して、私は君の敵じゃない。ただ、会わせたい人がいるの。そしてアオトは、無言で頷いたのだった。

会いたかったよ、兄さん。隠し通路を抜けた先に待っていたのはアオトの血を分けた弟、西魔王だった。語られる真実。出来の悪いフリをしていた兄と、出来の良いフリをしていた弟。もう、僕に残された時間は少ない。だから、最後に決着をつけよう。

両親の歪んだ愛情を受け入れられるほど、あの日の二人は大人じゃなかった。愛を愛だと理解するのには、時間が必要だった。だから僕は、僕を肯定し続けるしかないんだ。研ぎ澄まされた水の刃が貫いた体。どうして、よけてくれないんだよ、兄さん。

君はもう自由だ。見つめ合う蒼い瞳。アオトは優しい声で語りかける。君の罪は、僕が留め続けるよ。差し出された手に視線を落とした西魔王。君は、その手を掴むのかい。その声はいない筈の三人目の男の声。危ない。刃が貫く体。僕が、西魔王です。

引き抜かれた刃から滴り落ちる血。駆け寄る西魔王。あの日、あなたは私の手をとってくれた。なんで。だから次は、あなたがお兄さんの手をとる番だよ。どうして。あなたと過ごせて、私の現世は最高でした。西魔王の腕の中、水通者は瞳を閉じた。

完全なる落日:終章

教団地下祭壇のモニターに、西館から続く隠し部屋の様子が映されていた。横たわった金髪の男が流す血は、身にまとった黒いスーツを赤に染めていた。皆さん、失踪していた西魔王も、教祖様の為に、我々の為にと、最期まで戦ってくれていたのです。

西従者アリトン

その日、西魔王は二度死んだ。旧西魔王は新西魔王を討ち、そして旧西魔王は、西魔王だった自分を殺した。だから僕は、何者でもない。そして、アリトンは自らの手で、自らの道を選んだ。僕は、死ねないんだ、死んだらいけないんだ。そっと、水面が微笑み返す。僕は、生きて、そして、罪を重ねることで、償うから。

地下祭壇の外にて

完全なる落日:アスル

行って来いよ、目を覚まさせたいんだろ。アオトを見送ったアスルは、一人で西館を進み始めた。辿り着いた大広間、待ち構えていた無数の教団員。いいか、オマエら、オレが全員ぶっ潰す。そして、振り上げた槌は、無数の心を打ち砕こうとしていた。

西館を進んだ先にいたのは、アスルの憎むべき堕水才だった。ボクガアイタイノハ、キミジャナイ。電子音声と共に立ち去ろうとする堕水才の前に立ち塞がったアスル。あっちには、行かせねーよ。構える槌。オレはずっと、オマエに会いたかったぜ。

堕水才が操る水がアスルの頬をかすめる。こんなの、痛くも痒くもねぇっての。振り回し続ける槌。アイツらは、きっと誰も負けない。だからオレも、負けるわけにはいかねぇから。互いに一歩も引けない攻防。だが、その戦局を新たな水が洗い流した。

手を貸すよ。新たな水の正体は、堕水才の隣りに現れた水波神だった。相手は、子供一人か。布越しに聞こえた声。うるせぇ、チビ。オマエら、まとめてぶっ潰す。全身全霊を注ぐアスル。二人めがけて振り下ろされた槌は、三人を支える地面を砕いた。

崩壊した西館、重なった瓦礫から這い出したアスルは辺りを見回した。かすかに灯された光。ここは地下か。二人を探し歩き出したアスルが見つけたのは、地下道の先の一つの扉。そして、扉から漏れて聞こえたのは、無数の声が呼ぶ一人の名前だった。

地下祭壇にて

名も無き教団員

グリモア教団には、名も無き教団員が存在していた。少年が、いつの時代から所属していたのか、いつの時代から存在していたのか、その事実を知るものは少なかった。気がついたら、その少年は教団に存在していた。僕は、初めから存在していたんだよ。そう、教団設立時から、少年はずっと存在していたのだった。

グリモア教団地下祭壇

名も無き教団員は告げる。完全世界という不確かさは、翻訳する必要があるんだよ。黄昏が終わり、迎えた落日。そして、次に訪れるのは夜明け。せっかくの夜明けが、真っ暗じゃ寂しいよね。共に、黄金の夜明けを。そして、新たな教祖は生まれる。

メイザース

教団設立当時から仕組まれていた計画。人は悲劇を乗り越え、強くなる。だったら、悲劇の当事者が必要だよね。それは、教祖という記号だった。数多の教祖が死を迎えるたびに、創り出される偽りの教祖。だけど、それも今日までだよ。見届けようか、完全なる落日を。推薦状にはメイザースという名前が書き込まれた。

ソロモン:サウス

西魔王が横たわる西館の隠し部屋、東魔王の心が打ち砕かれた東館、北魔王の信念が切裂かれた北館。そんな三つのモニターに、教団員の視線と心は釘付けだった。そして、誰の興味の対象でもなかった平和で静かな南館に設置されたカメラが一瞬だけ捕らえた人影。直後、モニターが映し出したのは、ただの砂嵐だった。

ソロモン:ウエスト

君の行動は、想定内だったよ。メイザースは少し遅れて映されていた西館から続く隠し部屋をモニター越しに見つめていた。君の役目は、果されたんだ。西魔王に差し向けられた西魔王。そして君は、永遠に語り継がれるだろう。教団の為に死んだ、完全な存在としてね。あがいても無駄さ、逃げ道はどこにもないんだよ。

ソロモン:イースト

メイザースのすぐ近く、新たな東魔王はそこにいた。君の代わりは、すでに用意してあるから。見つめた先は東館を映したモニター。こうなることは、初めから知っていただろ。なのに、どうしてそんな瞳をしているんだい。その問いは、共にモニターを見つめる堕風才に向けられていた。さぁ、お別れの言葉を贈るんだ。

ソロモン:ノース

ドラマは、こうじゃなくちゃ。北館を映すモニターには、予期していた乱入者の姿があった。やっぱり、姫様を取り返しに来たんだね。浮かべたのは余裕の笑み。それとも、僕を始末しに来たのかな。崩れない笑み。いいよ、もっと派手に暴れてよ。抑えることの出来ない笑み。僕はずっと、君達に会いたかったんだから

完全なる落日:終章

この日、教祖クロウリーはグリモア教団の過去となった。そして、旧教祖に仕えていた南魔王パイモンは行方不明のまま、北魔王アマイモン、東魔王オリエンス、西魔王アリトンの三人は敗れ去った。こうして、完全なる落日は終わりを迎えたのだった。

真教祖メイザース

そして再び、執事竜の演説が始まる。彼らは、最後まで完全でした。モニターを見つめる瞳。だけど皆さん、心配することはありません。陽が沈もうと、我々には真教祖様がついています。我々を、完全世界へと導いてくれる真教祖様が。祭壇に姿を現した少年。始めましょう、黄金の夜明けを。真教祖メイザースと共に。

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黄金の夜明け

それぞれの目的のために

黄金の夜明け:序章

これで、僕という存在は完全になった。仕組まれていたのは数々の犠牲。その上に、僕という存在が立つんだよ。そっと呟く独り言。完全世界なんて、存在しない。そして、真教祖の声明が、新たな教団の幕は上げる。さぁ、黄金の夜明けを始めようか。

辿り着いたグリモア教団本部本館。地下から響き渡る歓声。これは、あの日の私の責任だ。ノアの口から語られる神話。竜が神に敗れた時、そこに存在していた例外。だから私は、奴を許すわけにはいかない。そして、ノアは火竜と共に、地下祭壇へと。

だったら、お姫様は私が助けに行くね。それは、いつかの恩返し。だって、あなたの大切な人なんでしょ。それは体を捨てた火竜へと向けられていた。きっとね、あの子はあなたと出会えて、幸せだったと思うんだ。だからこれは、私からの恩返しだよ。

おまたせっと。遅れて現れたのは、少しだけ息の上がったオリナだった。にしても、情けないなぁ。声をかけた先にいたのはライル。だから、まだやれるって。そして、二人は鞘の回収へ。その場に姿を現さなかった、アスルのことを気にかけながら。

姿を現さなかったのは、アスルだけではなかった。無事だといいんだけど。漏れ出した不安。僕なら、無事だから。更に遅れて現れたアオトの服は赤色に染まっていた。そして、そんなアオトに肩を貸す、一人の男の姿があった。紹介するよ、僕の弟だ。

ちゃんと挨拶しなって。だが、目を逸らすアリトン、あえて何も聞かない仲間達。そして、そっと発せられた言葉。僕は、弟でもなければ、西魔王でもない。だから僕はね、僕の戦いの続きを始めるよ。それは、旧教祖が与えた特別な任務の続きだった。

やっぱり、そうだったのね。囚われの身であるカナンは雷帝竜へと問いかける。そうよ、アタシはね、アンタも、竜王も、道化竜も、竜界のみんなが大嫌いなの。もちろん、創られた教祖様もね。そう、雷帝竜が信じていたのは、初めから真教祖だった。

真教祖の討伐、囚われた姫の奪還、奪われた鞘の奪還、それぞれの目的の為、本館に集った者達は再び、散り散りとなった。そして、誰もいなくなった本館へ、北館からの通路を通り現れた人影もまた、自らの目的の為に、動き出していたのだった。

真教祖討伐のために

黄金の夜明け:ノア

教団本部地下祭壇へ向かうノアの表情は、いつにもなく硬かった。きっと、これが最後なんだろうな。そして、行く手を阻む二人の水の魔物。ここから先へは、行かせない。だったら、僕が相手をするよ。ノアの背後、教団の裏切り者は姿を現した。

それでは、先に進ませてもらおうか。続く地下道、立ちはばかる無数の教団員。まずは、僕の魔法をご覧下さい。オズが鳴らした指先。そこに現れたのは、炎が模した三つ編みの少女と、小さな犬、背の高い案山子と、翼の獅子、古ぼけた機械だった。

六つの炎が切り開く王の道を進むノア。あの日、お前を連れ戻していたら。頭を過ぎる後悔。だが、その後悔は、すぐに温かな炎が燃やし尽くした。もし、そうしていたら、お前は皆と、出会えなかったんだな。六つの炎は、止まることを知らなかった。

家族の思い出は炎となり、ノアの進む道を照らし出していた。歩みを止めることのないノアが辿りついたのは、一つの開かれた扉。踏み入れた地下祭壇、その先には真教祖が鎮座していた。久しぶりだね、古の竜王様。そして、出来損ないの道化竜もね。

黄金の夜明け:ノア

始まった攻防戦。君は、王に相応しくないよ。だが、ノアは動じなかった。あぁ、知っている。その言葉の込められた意味。僕が、統べる者になる。無数に湧き出る教団員。私は王様失格だからな。古の竜王は、古へと帰る覚悟を決めていたのだった。

私は王でありながら、あるまじき道を選んでしまった。その証拠が寄り添う罪深き道化竜だった。まさか、初めから。焦りを隠せない真教祖が出したのは各教団員への避難勧告。だから、私は古の竜王なんだ。新しい時代は、貴様以外の誰かに任せよう。

クロウリーから伝えられた特別任務

黄金の夜明け:アオト

これは、僕の戦いだから。刀を構えたアリトン。だったら、これは僕の戦いでもあるから。傷ついた体で刀を構えたアオト。目的は違えど、想いの交差する蒼き兄弟。そして、そんな二人に切りかかる堕水才と水波神。再び、初恋が始まろうとしていた。

だから、僕の戦いなんだ。一人、刀を手に立ち向かうアリトン。やっぱり、君は裏切ったんだね。水波神はその刀を弾いてみせた。裏切ってなどいない、これは僕の信じた教祖様の心からの願いだ。旧教祖が伝えた特別な任務、それは教団の壊滅だった。

教祖様は、僕を受け入れてくれた。振るう刀。だけど、もう教祖はいないよ。弾かれる刀。罪を重ね、自分を肯定するしかなかった僕を、受け入れてくれたんだ。荒ぶる心。そして生まれた隙間。襲い掛かる刃。だが、それでもアリトンは守られていた。

水の刃を弾いたのは、アオトの刀だった。君は、悪魔なんかじゃないよ。傷ついた体が抱き起こしたアリトンの体。あの日、僕は逃げた。だけど君は、逃げなかった。悪魔になるべきは、僕だったんだ。アオトは全ての罪を留めようとしていたのだった。

そして、そんな二人を前に堕水才の動きは止まっていた。どうしたんだ。水波神の問いに、答えようとしない堕水才。堕水才の瞳に映し出されていたのは、あの日の瞳ではなかった。そう、蒼き兄弟の瞳は、共に濁ることなく、澄み切っていたのだった。

違う、違う、違う、違う、違う、違う、堕水才の脳裏を埋め尽くす言葉。だが、蒼き兄弟はその隙を見逃しはしなかった。あの日覚えた初恋は、恋する人の手により、終わりを迎えた。それ故に、堕水才の初恋は最高の形で終わりを迎えたのだった。

囚われた姫、カナン奪還のために

黄金の夜明け:ミドリ

きっとここにも、沢山の想いが集まっているんだね。友達の弟の言葉を頼りに、地下牢への道をひたすらに走るミドリ。だが、そんな彼女の行く手を塞ぐように現れたのは堕風才だった。こうして会うのは、初めてね。でも、初めて会った気がしないよ。

それは恩師の親友であり、かつての仲間の産みの親だったからだった。私はあなたのこと、止めなきゃいけない。構えた棍。だが、堕風才はその道をあっさりと明け渡した。あの子を倒してくれてありがとう。もし、あなたが倒せなかったら、その時は。

誰だって、友達を自分の手にかけたくはない、それは堕風才も同じだった。ウチもあの時、そうしたくなかった、沢山反対したヨ。だが、離れていた時間は長すぎた。今さら、私は誰も信じることは出来ない。だから私は、あの日の自分だけを信じるの。

堕風才に別れを告げ、辿りついたのは竜界の姫が囚われていた地下牢だった。よくここまで来られたわね。待っていたのは雷帝竜。お姫様を、返してもらいにきたよ。なんで、アンタみたいな人間が肩入れすんのよ。人間とか関係ない、心は一緒なんだ。

だが、ミドリに残された体力は限界を迎えようとしていた。なによ、偉そうなこと言ったって、所詮は人間ね。棍を握る力は抜け、立つことに精一杯だった。そろそろ、死んでもらおうかしら。雷帝竜の最後の一撃が轟く。やっぱり、心は一緒なんだ。

最後の一撃を受けとめたのは、古ぼけた機械だった。本日に限り、当園のパレードは出張とさせて頂きます。ウサギのきぐるみは告げる。小さな犬は獣を呼び出し、背の高い案山子は風の刃を、翼の獅子はその鋭い牙を、それぞれの想いを放つのだった。

奪われた「聖なる鞘」奪還のために

黄金の夜明け:オリナ

オリナとライルは、鞘が格納されているという地下宝物庫への道を急いでいた。ちゃんと走りなさいって。遠慮しないオリナ。うっせーな。強がるライル。そして、そんな二人が気にしていたのは、鞘だけではなく、行方不明の一人の仲間のことだった。

君たちが探しているのは、聖なる鞘かな、それともこの少年かな。二人の前に立ちふさがったのは執事竜。そして、目の前に投げ捨てられたアスル。最悪の形で果された再会。絶対許さない。よっぽど殺されたいみたいだな。二人は、怒りを露にした。

たった二人で何が出来るというのだ。執事竜の背後から現れた新南魔王と新東魔王。余裕の笑みを浮かべる三人。悪いけどさ、二人だけじゃねーんだ、出て来いよ。直後笑みは焦りに変わった。なぜ、貴様がここに。派手にいくぜ、レッツ、ハッピー。

そこには、傷だらけの旧北魔王が重火器を構えていた。あのまま死んでいれば、完全な存在になれたというのに。死ぬのはテメェの方だ。だが、一人加わったところで、オリナ達の劣勢に変わりはなかった。もう一人加わったら、どうなるかな、けひひ。

現れた旧東魔王。私はあんたらを助けたいんじゃない、こいつらが許せないだけ。続く攻防戦。君たちはもう、過去なんだ。思い出に消えてくれ。何度倒れようとも、立ち上がり続ける四人。いくら頑張ったって無駄だよ、ここに鞘なんてないんだから。

すでに、鞘は宝物庫から運び出された後だった。そんなことって。動揺するオリナ。君たちが来ることは、初めからわかっていたよ。だったら、なんでオマエらがここで道塞いでんだよ。ライルが突いた核心。この先には、大切な何かがあるんだろう。

その言葉で活気を取り戻したのは旧魔王二人だった。聞こえた竜の咆哮。チビを抱えて逃げろ。オリナ達とすれ違う人影。ここは俺達が食い止める。旧北魔王は銃声を響かせる。だから、あんたが迎えに行きなさい。旧東魔王は人影を見送ったのだった。

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響き渡る竜の咆哮

黄金の夜明け:ノア

グリモア教団本部全域に轟く竜の咆哮。それは炎となり、辺りを紅く包み込む。もうじき、ここも崩れるだろう。その咆哮は、あらかじめ決められていた脱出の合図。私達はもう、今の時代に必要ないんだ。紅く染まる言葉。だから、共に眠るとしよう。

黄金の夜明け:アオト

聞こえてきた竜の咆哮、それは脱出の合図だった。それでも退こうとはしないアリトン。これは、僕の任務だから。だが、そんなアリトンに差し出された兄の掌。一緒に逃げよう、君は彼女の分まで生きなきゃいけない。それだけは、君が留める罪だよ。

崩れ落ちる教団本部を背に、蒼き兄弟は約束を交わした。僕はこれからも、アオトとして生き続ける。それは弟の自由の為に。僕はこれからも、アリトンとして生き続ける。それは罪を償う為に。僕はもう、戻れない。だから行くよ。さよなら、兄さん。

黄金の夜明け:ミドリ

みんながね、どうしても行きたいって言うんだ。それは、言葉ではなく、心の声だった。誰かが監視カメラを壊してくれたおかげで助かったよ。牢屋の扉が開かれると共に、響き渡る竜の咆哮。救出された竜界の姫は、少し複雑な表情を浮かべていた。

遠く離れた丘の上から、崩れる教団本部を見守るミドリ達。そして、いつの間にか鳴き止んでいた竜の咆哮。そういう、ことなのね。ただ、悲しい瞳で見守る永久竜。見届けてやれよ。ミドリ達のすぐ横には竜神がいた。見届けたら、俺について来い。

黄金の夜明け:オリナ

傷だらけの仲間を抱えながら教団本部を脱出したオリナ達は、教団本部が崩れ行く様をただ見つめていた。果たせなかった任務を、悔いてる暇なんてないぜ。その裏側、既に他の隊員達は動き始めていた。夜明けが昇るのは、いったいどっちなんだろう。

黄金の夜明け:ノア

鳴り止んだ竜の咆哮、いつまでも燃え盛る炎が照らし出したのは夜明け。この日、グリモア教団本部は全壊した。そして、一夜明けようとも、五夜明けようとも、十夜明けようとも、古竜王ノアと、従えた道化の火竜が竜界の玉座に戻ることはなかった。

地下宝物庫で果たされた再会

南従者パイモン

なぜ、お前がここに。それは一筋の光。約束を忘れてしまったのですか。南従者が浮かべる優しい微笑み。なぜだと、聞いているんだ。その微笑みの返事にと、流れたのは大粒の涙。真っ暗な地下宝物庫で果された再会。そしてパイモンは、小さな体をそっと抱き寄せる。ずっと側にいるって、約束したじゃありませんか。

黄金の夜明け:終章

みなみまおーは、ずっといっしょにいてくれますか。それは、幼き日に交わした何気ない約束。だが、少女は幾つ歳を重ねようと、その約束を忘れることはなかった。そして、そんな約束を交わした相手もまた、二人の約束を忘れることはなかった。

南館からの侵入者は、再び旧教祖の手を引いた。そこには旧教祖と旧南魔王という関係ではなく、一人の少女と南従者という関係が存在していた。さぁ、ここから抜け出しましょう。そして、この日、旧教祖は本当の意味での外の世界を知ったのだった。

不完全な世界に生きるんだ

黄金の夜明け:終章

私はもう、教祖ではないのだ。旧教祖は涙ながらに訴える。ええ、存じております。だから私は、南魔王ではなく、南従者なのです。そして、私だけではなく、きっと彼らも同じはずです。二人は崩れ行く教団を眺めながら、かつての三人を待っていた。

教団を後にした旧東魔王の後ろ、ふと姿を現した堕風才。全部知ってたのね。口を閉ざしたままの堕風才。今更、ごめんなさいだなんて聞きたくない。遮られた言葉。私とあなたは、選んだ居場所が違った、それだけの話よ。いつかまた、会いましょう。

兄に別れを告げた旧西魔王は流水獣の待つ浜辺へ。そこで待っていたのは、流水獣だけではなかった。もう一人の待ち人を抱きかかえ、そっと海へ。さよなら。水面に浮かぶ体。最高の現世はまだ終わらないよ。そして、繋いだ手は解かれたのだった。

旧北魔王は左腕に残った傷跡に、もう一筋の傷を足した。これで、お別れだ。そして首輪に手を伸ばし、自らの手でベルトを締めた。これは服従の証なんかじゃない、忠誠の証だ。これから始まる未来、振られた尻尾は、振り止むことを忘れていた。

ほら、見てください。南従者の一声は、旧教祖の視線を誘導するに十分だった。西から男が一人、北から男が一人、東から女が一人、装いを新たにした三人が、再び一つの場所へと集まろうとしていたのだった。そしてほら、もうじき、夜が明けますよ。

崩れ落ちた砂上の楼閣を見下ろす旧教祖。そして、再び集った四人の従者は、それぞれの想いで思い出に手を振る。私達は、不完全な世界に生きるんだ。風になびく金色の髪。さぁ、ここからもう一度始めよう。そこには、黄金の夜明けが訪れていた。

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後日談:魔界にて

魔なる参謀長

ファティマの元に届けられた報告書には、グリモア教団本部の崩壊が記されていた。その報告内容は詳しく、旧教祖、旧魔王の離反、さらには真教祖の目覚めまでもが記されていた。そして、報告書の作成者として水波神の名前が記されていたのだった。

なぜ、教団は鞘を必要としていたのか。なぜ、運び出されていたのか。そして、鞘とはいったいなんなのか。報告書には、このように記載されていた。鞘は万物を再生させる力を持つが効力は未だ不明確。また、鞘が運び出された形跡は皆無だった、と。

そして、報告書には生きていた旧教祖についても記されていた。真教祖一派は、旧教祖を幽閉するも、殺しはしなかったということ。また、幽閉する前に、とある実験が行われていたということ。だが、肝心の実験内容については記載されていなかった。

運び出されることなく教団本部から姿を消した鞘。とある実験のあと、殺されず、生かされていた旧教祖。そして、未だ不明確ではあるが、鞘が持つという効力。なるほど、そういうことだったのね。ファティマは更なる次の一手を考え始めたのだった。

その場に、女王のお友達も二人いたみたいですね。ファティマは隠すことなく、ありのままの報告をした。それとも、もう友達じゃないのでしょうか。そんな問いに、ユカリは顔色一つ変えることなく答える。あなたには、なにも関係のない話でしょう。

お友達が、もう一人動かれているみたいです。それは、聖王奪還へと動き始めたアカネのことだった。少年達は、いったい彼を取り戻し、どうするつもりなんでしょう。まさか、王が帰還すれば戦争が終わり、平和になるとでも思っているのでしょうか。

続くファティマの問い。お友達はみんな、女王ではないあなたの為に、いえ、あなた達の為に奮闘しているようですが、どのようにお考えなのでしょうか。だが、それでもユカリの顔色が変わることはなかった。私にも、なにも関係のない話でしょう。

スピカ

女王の間へと届けられた沢山の稟議書類。あ、あの、ハンコをお願い出来ますでしょうか。だが、その呼びかけに応える者はいなかった。それは、スピカの声が小さかったからなのか、あえて聞こえないふりをしていたのか。闇魔女王は窓辺から夜空を見つめ続けていた。女王様は、お星様のことがお好きなのでしょうか。

星屑魔スピカは夜空を眺める闇魔女王の為に紅茶を用意した。ほのかに漂うオレンジの香りに、顔をゆがめる闇魔女王。お口に合いませんでしたでしょうか。だが、首は左右に振られた。ねぇ、あなたはどちらだと思う。開かれた唇。星が光り輝く為に、夜は闇を纏うのか、それとも闇を纏う夜の為に、星は光り輝くのか。

星屑館パールリア

人が空を見上げるのは、お星様に願い事をする為だそうですよ。それは幼き日の記憶に残る絵本の話。星が光り輝くのは、みんなを笑顔にする為だそうです。そう、その言葉は、いつもきらきらな笑顔の少女を思い出させるには十分過ぎたのだった。

魔なる参謀長

報告を終え、自室へと戻ったファティマの元へと訪れた来客者。それで、世界はどのような決断を下したのかしら。僕が前から話してるとおりだよ。それはあなたにとって、つまらない世界よね。その一言は、世界の決断を鈍らすのに十分なものだった。

後日談:天界にて

精なる参謀長

随分と派手に暴れたのね。ヴィヴィアンは数多の戦いで傷ついた体の手当てをしていた。それで、目的は果たせたのかな。知ってるくせに、なに言ってんだよ。その言葉の出所は、ヴィヴィアンの膝の上だった。っつか、ベッドに寝かせてくんねーかな。

じっとしてなきゃ、めっ、だよ。二人の間には特別な時間が流れていた。よく頑張りました。膝の上で語られる教団本部崩壊の一部始終。こんなにお話してくれるだなんて、昔と逆転しちゃったみたいだね。膝の上、そこには少し照れたライルがいた。

もう、大丈夫だから。ライルは未だ癒えきらない体を無理矢理起した。だって、まだ終わってないんだろ。それはヴィヴィアン側からの報告の後の行動。うん、真教祖も古竜王も行方不明のままだよ。そしてね、最後にもう一つ、気になる話があるんだ。

それは、殺されることのなかった旧教祖に対する言及。私はまだ、納得いってないんだよね。運び出された鞘と、殺されなかった旧教祖。もし、その仮説が正しかったとしても、それは意味のないことだから。やっぱり、まだなにか残されていると思う。

トントン。扉を叩く音が聞こえた。いらっしゃい。ガチャ。扉が開く音が聞こえた。そういえば、立場が変わってからは、紹介してなかったよね。そこに現れたのはヒカリだった。紹介もなにも、知らないわけねーだろ。それは、どっちの意味なのかな。

どっちだっていいじゃねーか。そらした視線。ってことは、どっちもってことなのかな。ヴィヴィアンは笑ってみせた。こんにちわ。そして、そらした視線に合わせたヒカリ。いつも、兄がお世話になっていました。あと、姉がご迷惑をおかけしました。

全部、知ってるって顔だな。それはヒカリの出生の秘密だった。私にはお兄ちゃんもお姉ちゃんもいません。いるのはパパとママだけです。それは、今も変わりません。だけど、私には兄と姉、父と母がいます。それも、今は変わらない事実なんです。

そして、ヒカリは続けた。あの人が言ってたんです、嬢ちゃんはありのままの事実を受け入れたいのか、それとも否定したいのか、って。それは、死という事実が否定された死ぬことの出来ない二人の王様の昔話だった。だから私は、その事実を――。

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